手作り工房家具に関する一考察
工房家具について考えてみます。カスタマーの側から考えますと、なぜ、工房家具を購入するかということですが、なぜ既製品を選ばないかと考えると分りやすいかもしれません。その理由の一つは、既製品に魅力がないということだと思います。では、既製品に無くて工房家具にある魅力とは何かということですが、およそ、以下の事柄ではないでしょうか。
1. 素材的価値
2. 機能的価値
3. 工芸的価値
4. 文化的価値
- 素材的価値は、いわゆる、一枚板に代表される無垢材の魅力です。既製品にはほとんどありませんが、ほとんどの工房家具は無垢材を使用しています。これには、二つあり。一つは一枚板に代表される銘木の持つ希少価値です。もう一つは、合板表面の突板張り仕上げではなく、無垢材を用いているという本物志向です。
- 機能的価値は、あつらえの魅力です。寸法、機能、デザインなどカスタマーが自分の要望で作ってもらう、自分だけの特別機能の家具という価値です。
- 工芸的価値。これは極端にいえば、人間国宝的な、卓越した技能でもって作り出された貴重な一品に価値を求めるということです。これには、卓越した技能も含まれるため、技術的希少価値といってもいいかもしれません。
- 文化的価値は、記名性、作家性と言ってもいい価値も含まれます。つまり前項の工芸的価値とほとんど同意です(括れるかもしれませんが、ご容赦)。しかし、ここでいいたいのは、もっと広く、工房家具における文化のうねりのようなものを共有したいという、カスタマーの願望が購入動機に含まれているという状況は考えられ、それを文化的価値といってもいいのではないかと思い、敢えてリストしました。
工房家具の場合、用途がある実用品が前提です。ほとんどの場合そうだと思います。そうしますと、量産家具メーカーは競争相手です。量産メーカーも、工房家具のスタイルは視界に入っており、かなり前から工房家具らしい製品をリストアップしています。彼らがその気になれば、1、2の事項は難なくクリヤーできます。技術やデザインにおいては、実は凌駕しており、もしそうでない場合、彼らがその気になるか成らないか、メリットがあるかないかという問題だけだと思います。
実際、工房的な魅力を携え、量産ではないが、あつらえでもない。言い換えれば、あつらえにも対応できるが少量生産を行うファクトリーがあり、なかなか好評です。では、工房家具にあって量産家具に出しにくい特徴といえば、3、4の事項となってきます。つまり、記名性、作家性、新しいトレンドに乗っている感じ(曖昧だが、それを簡単に受容する空気は日本にはある)、生き様(少しオーバーな表現かもしれないが、購入動機にはなる)等と思います。
次に、これら工芸的文化的価値においての競争相手を敢えて考えてみますと、陶器、骨董、民芸品全般、絵画、建築、車、パフォーマンス(コンサート等)だろうと思います。
例えば、立派な御殿のような伝統的日本建築が多く建つ地域ですと、それらはコンペティション対象ですが、認識としては、厚くて広い一枚板の座卓などがすんなり売れる地域である可能性が高いということでもあります(事実、私の体験では逆は難しい)。
そのような分類は嫌いだし、したくも無いという考えは理解できます。しかし、カスタマーは、工房家具を購入し、それによって達成される何らかの価値を認めるのです。だから、シビアに観察しています。高価なものですし、何かを犠牲にしなければ購入することが難しい方が多いからです。
お分かりだと思いますが、この文章から導かれるのはマーケット戦略の初歩です。僕は、デザイン系から量産を体験し、量産だけが家具の価値ではないと認識されつつある日本の家具業界から、今日、量産に向かいつつあるマレーシアにいます。これは不思議な感覚です。
在日中から営業の大切さを時折訴えた私です。確認の意味でこのようなことを書いてみました。
(2001/10/30)