Column
家具工房とウェブサイト
■家具工房はサイトを持つべきか
今更申すまでもありませんが、最近は通信費も安くなり、多くの人が個人のウェブサイトを開き、家具工房や家具関連のサイトも随分増えています。
所で、時々耳にしますが、「ホームページ」を作ってはみたものの、その後の管理が面倒億劫大変で、その後の更新がほとんど行われず、眠ったようなサイトもあるということです。私も更新や管理の大変さや様々な問題点を今更ながらに感じている一人ですが、結論から申しますと、ウェブサイトは持った方が良いと思っている一人です。しかし、開設から維持管理に関しての様々な問題点もあります。
以下、我々が当初「小国木材加工研究所」としてのウェブサイトを持とうとした理由と、これまでの推移及び問題点等を参考までに述べてみたいと思います。具体的な制作上のノウハウや技術的な問題は専門のサイトに詳しく、今だ勉強途中の私は、述べる自信も資格もありませんのでそちらを参照してください。
■家具工房はサイトで何をするのか
家具工房がサイトを持つ目的は、多くの場合、注文につなげたいということだと思います。どのように工芸的、芸術的なイメージをまとったサイトを演出し、展示会に足を運んでもらうための導入ツールとして捉えているといった、ある意味で営業的に消極を装っているサイトでも、最終的な目的はそこにあるはずです。
有名なデザイナーのデザインによる量産品の椅子などの場合は、ウェブ上で注文するカスタマーは、実際にその商品を良く知っているか、新商品でも、同じデザイナーやメーカーから製造されたものであれば品質の予想がつきますからウェブ経由で買えるわけです。実際、結構な数の家具がウェブを介して流通しています。それに引き換え、高価で、品質を知られていない工房家具の場合は、サイトから直接注文を得るのは難しい状況です。サイトの制作にあたってはそのような状況を認識し、どのような方針でいくかを最初に考えておかなければならないと思います。
既存の家具工房のサイトを見て気が付くのは、注文につなげるための紹介ページとしてのサイトと ― このタイプがほとんどですが、同じ職種や木工に興味がある方々を対象にした工房サイトがあるのに気が付きます。我々のサイトは後者です(理由は後述します)。この場合気を付けなければならないと思いますのは、販売と情報の公開という二つの要素がサイトの焦点をぼやけさせるということです。この点を注意し、常にサイトの基本姿勢を明確にしておく必要があるかと思います。スタンスや姿勢が一定ではなければ、訪問者は混乱しますし、信用してくれません。
■開設に当って― 内容について
最終的にはそのサイトの「内容であると言われています。まったく同感です。内容が魅力的ではないサイトに通信費を払ってまで訪れないのは当たり前で、しっかりした基本姿勢に貫かれ、充実した内容のサイトに魅力があるのは当然です。内容の充実は開設後も続く問題でもありますが、最初に内容の設定や設計をしっかりさせた後に制作に入らなければならないと多くのテキストや「ホームページの作り方」に類するサイト等で述べられていますし、「ホームページの作り方」に類するサイトでは、自分が作ろうとしている内容と同じカテゴリーのサイトを検索し、競合サイトが無いものを目指す、あった場合でも、内容的に超えられるものを目標にする等々、様々なアドバイスに出会えます。
家具工房が制作するサイトの場合、似通った内容が多いようですが、これはもうある程度仕方のない所ではないかと思っています。例えば、「無垢材の良さをアピールする」「自然塗料の良さを訴える」「技術を差別化の切り札にする」「全体のイメージを工芸家風に持っていく(この場合はなぜか和風になってしまうのですね)」等です。似通った内容のサイトが増えれば、同じカテゴリーで見た場合、情報の分散化につながり、ビジターの増加は見込めないので、思い切って違うテーマや内容を選ぶべきとのアドバイスもあります。まったくの個人ページなら可能でしょうが、家具工房のサイトとなると内容を極端に変えることは不可能です。その中で差異化を行うのは難しい所です。コツコツと時間をかけ、自分の個性を出していくしかないのではないかと感じています。
先ほど「内容である」と書きましたが、我々の場合を思い返してみますと、当時はコンテンツに対する確固とした指針があったとは思えませんし、全てが試行錯誤でした。ウェブの状況やページ作りに関して、将来サイトで行いたいと初心者の私が考えたのは、実現の見込みがあったわけではありませんが、次ぎのような内容でした。
- 1.技術情報の公開
-
1993年から九州木工通信という家具工房のための情報誌(月刊:A4・4ページ)を発行してきました。80年代に木工関係のミニコミ誌(木工通信 黙々)が発行されていました。そのミニコミ誌が休刊後、暫くして別の方が発行を再開し、それを知っていた私の知人から、九州で同じような通信を発行したらどうかという提案を受けて発行を決めたのです。
私が家具職人を始めた時期には、現在でも状況はそんなに変わってはいないようですが、日本では木工に関してプロが参考にできるレベルの実用的な技術書は無く、丸善や嶋田洋書、東光堂書店などで欧米のテキストを買ってきては参考にしていました。かけ出しの家具職人の私にとって、初めてみる欧米の技術書は圧倒的でした。日本では見たこともない実用的なテキストばかりでした。我が国でも、日本語で読めるこのような技術書がぜひとも必要だと思っていました。
そのような事情もあり、稚拙でもいいから自分が獲得したノウハウや技術を情報として公開していこうと考えたのです。欧米の木工雑誌では、技術をオープンにしています。オープンにする事によってそれをベースに多くのウッドワーカーが改良を重ね、より高度なものへ昇華させています。この土壌が大切だと思ったのです。
これまで九州木工通信に連載した家具製作関連の情報を再編集して我々のウェブサイトで広く公開することにより、その思いが少しでも具体化すれば幸いだと考えたのです。
- 2.家具および家具関連材料の販売
-
ウェブを媒体にして家具を売ることは難しいであろうことは私にも想像できたのですが、家具関連材料は売れるのではないかと考えていました。といいますのは、小国木材研究所は阿蘇郡小国町から委託事業で活動しています。なにがしかの方法で収入を得る事によって我々の活動を有利に展開できますし、将来は専用スタッフを置けるくらいになりたいと考えたのです。
現在、デンマーク製のペーパーコード、英国製の旋盤用特殊工具、オイルフィニッシュ用桐油などを販売しています。オイル以外は海外の製造元から直接購入しています。
家具に関していえば、我々の家具は高価なものですし、いくら品質や仕上げに自信があっても、注文される方としては、実際に見、手で触って確認しないとオーダーに結びつくのは難しいと考えます。ウェブの役割としては、家具制作に関しての我々の考え方を提示し、理解していただく事と、各種イベントのインフォメーションの案内と考えています。
- 3.国際的にウッドワーカーと交流を行う事
-
ウッドワーキングを通して国際的な交流を行い、活動の裾野を広げたいという思いは当初からありました。それは欧米に限らず、アジアの国々も含めてのことです。そのため、英語ページは初期段階から必要条件でした。この希望が実現できるかどうかを悩む前に、恐ろしい事に可能性の是非さえ分らず、夢ばかりみていたのです。
その後、英国からウインザーチェアーメーカーを呼んで講習会を開催する事ができました。現在私がマレーシアに来て家具制作の指導を行っていますことは、将来に向けてこの希望の具現化に繋がればと思っているところです。
■デザイン・レイアウトについて
デザイン、レイアウトに関しては非常に重要な問題です。そのサイトの表情や大げさに言えば理念さえ表現するからです。我々のサイトに関し、デザイン面では以下の考え方で制作しました。
- 1.シンプルなデザインに徹する
-
個人的には本文とあまり関係のない装飾的な処理は目障りなだけで意味がないと考えています。読みづらくしているバックグラウンド、目障りな点滅に動きを与えた画像。沢山の種類の書体に派手な色使い。これらは敬遠されるべきものだと考えます。それらのデコレーションがサイト全体と内容に対してどのような意味を持ち、どれだけの効果を発揮するのでしょうか。読みにくく、目を疲れさせるという訪問者に対してのデメリットを上回る過飾の価値はどこにあるのかということですが、設置者が考えるほどの効果ないように思います。しかし、このような趣旨の我々のサイトは少数派で、単なる地味ページなのかもしれません。
- 2.フレームの使用
-
初心者の私は、表紙ページ左に縦帯びの入ったものがいわゆる「ホームページ」だとイメージしていました。それで迷うことなく、それと同じ体裁をとったのです。つまりフレームの使用です。しかし、現在ではフレームに意味はなく、使用しないほうがいいという指摘もありますし、私自身もそう思います。なにしろロボット検索ではフレームページは拾われにくいそうで、多くの人に知られたくない場合に意味があると書かれた文章を読んだ時はショックでした。また、ロボット検索で個々のページがピックアップされますと、フレームトップが、つまりホームが表示されないのです。何度か無くそうと努力をしましたが、現在のイメージを残しながら気に入ったデザインができないことと、変更に伴う膨大なエネルギーを考えると変更できないでいます(注:その後変更し、現在はフレームを使用していない)。
■くたばれ、ヤフー!
当初は最低限のコンテンツで公開しました。次ぎは検索エンジンへの登録です。広く認知してもらうためには色々な検索エンジンに登録し、せっかく完成したサイトを見つけてもらわなければなりませんが、これが意外に面倒なのでした。
アクセス数を伸ばす一番のポイントは、ヤフーへ登録することができたかどうかと言われています。今では東大合格よりも難しいといわれているヤフーへの登録ですが、我々の場合は、二度目の申請で登録できたのです。何も知らなかった当時の私は、それがそんなに難しいということを知りませんでした。あるいは、ヤフーの木工関連のカテゴリーへの申請がまだ少なかった時期だったのかもしれません。
しかし、我々の経験から申しますと、ヤフーに登録されたからといってアクセス数は増えませんでした。原因の一番目は「タイトル」と「紹介文」にあったと思います。「小国木材加工研究所」という硬いタイトルのページと「熊本県阿蘇郡小国町の委託事業で活動」という紹介文のサイトをクリックするのはよほどの物好きに違いありませんから。「アクセス数を伸ばす」に類するサイトでも指摘されていることですが、「興味を引くタイトル」「ずばり内容が分かるタイトル」にすることは大切です。
二番目の原因として、関連性の薄いカテゴリーへの移動がありました。当初は木工一般のカテゴリーに登録されていたのですが、ある時期に内容の分類の見直しが行われ、我々のサイトは、「組合」つまり、森林組合(!!!)などのカテゴリーに移動させられていたのです。これで決定的に見られないと感じました。はっきりいってショックでしたが、我々のタイトルと紹介文を考えるとヤフーの担当者は責められません。
三番目としては、もうシリアルトラブルといっていいかもしれませんが、木工カテゴリーからの削除です。あるサイトで、カテゴリーからの移動申請のリクエストを行うと、削除される場合があると述べられていましたが、それを承知でヤフーにカテゴリー移動のリクエストを行ったのです。結果は、ある日を境に木工に関する全てのカテゴリーから我々のサイトは消えていました(笑ってやってください)。現在ヤフーでは地域情報にリストされているのみです。ただし、地域情報だけにリストされている場合でも、タイトルの付け方などの工夫で、ヤフー内検索で上位にランクされる可能性がありますから悲観することはありません。むしろ、木工のカテゴリーかあるいは自分の意図とは違ってインテリア・家具のカテゴリーの膨大な数のサイトの中にリストされてしまった場合より、地域情報の中にあっても、ヤフー内検索でトップテンに表示される方が効果的かもしれません。
以上の理由で、我々の場合は現在までの所、ヤフーに登録されたメリットは少なかったと思います。
あえて過激な小見出しをつけました。インパクトがありましたでしょうか? これがアクセスアップの 「コツ」 でしょうか。ただしこんなことを書くと、我々のページはヤフーサイトから完全に消去されるかもしれませんが---。
■ロボット型検索エンジンへの対策
ヤフーは圧倒的に利用されている検索エンジンですが、その他の多くのロボット型検索エンジンへの対応も非常に重要です。我々は一通り申請を行って安心していたのですが、これではまったく不十分という事を最近になって知りました。
木工関連のキーワードで我々自身のページを検索してみましたが、まったく検索結果にリストされません。検索結果は1ページに20件程度表示されます。10ページ進んでも出て来ません、訪問者は、よほど深刻な理由がない限り、せいぜい3ページ程度しか見ないのではないかと思っています。逆にあまり関連性のないサイトが拾われています。つまり、我々のページは「ロボット型検索エンジン」への対策・対応を行っていなかったのです。
膨大な労力をつぎ込んで制作したものの、検索結果にリストされないなら作った意味がありません。サイトを持ち、維持管理する作業は、内容の更新に加え、各種検索エンジンへの対策です。特にヤフーに登録されていないサイトにとってこれは重要です。
その後、ロボット型検索エンジンへの対策として、個々のページを登録し、といいましても、現在はこの文章がリストされているページです。そこからトップページ(フレームの全体表示ページ)へ来れるようにしました。
「アクセス数を伸ばす」に類するサイトで「ロボット型検索エンジン」への対策は詳しく述べられていますので、興味のある方はそちらを参考にして下さい。
■家具工房のサイトでアクセス数は意味を持つか
多くのプライベートなサイトの存在の意味は制作者個人の自己実現にあります。その場合、アクセスカウンターで示される数字は、自己実現の度合いとして捉える事ができますし、増加速度は発展のインジケーターです。これはあくまで非商業ベースでの話しです。
「家具工房はウェブサイトで何をするのか?」でサイト設置の目的について述べましたように、家具工房のサイトの場合は、非商用のプライベートページの性格と多少異なります。この場合、もし仮にアクセス数が少なくても注文に繋がる確立が高いサイトがあるとすれば、アクセスカウンターは意味を持ちません。アクセス数が多くても注文につながらなければ、やはり同じです(ただし、確率論的にはアクセス数の多いほうが注文に繋がるケースは多いのかもしれませんが・・・)。プライベートサイトとは目的が異なるからです。
ただ、家具工房のサイトにおいても、カウンターは一つの目安になりますし、増加すれば嬉しいものです。ただ、家具工房のサイトでも、商売というよりもプライベートサイトと同じように自己実現に重点を置いている場合もあるでしょうから、その場合は、アクセスカウンターは積極的な意味を持っているはずです。
■家具工房にウェブサイトは必要ない?
家具工房のサイトも今後益々増加するでしょう。そうすれば、村おこしブームでほとんどの町村に目新しい建物ができた時点で、差異化のはずが結局は元の木阿弥に戻ったように、家具工房のサイトに関しても、情報の分散化が行われただけで、元の木阿弥状態となる可能性もでてくるわけです。その上、自分のサイトの内容の充実をはかり続けるのは相当の労力を有します。さらに、注文を得ることが難しい状況はかわりません。そうなってくると開設の意味合いも薄れてきそうです。
それでも、通信速度は益々早く安くなり、多くの方の利用が容易になっている現在、サイトは必要だと私は考えます。リアルタイムでのフォローと情報の伝達という点ではやはり有効だからです。また、上記の理由によりサイト公開のメリットが低い場合は非公開サイトという方法もあるのではないかと考えます。非公開によって、展示会等で知り合えた特定のカスタマーに集中的に有益な情報を送ることができますし、公開サイトでは出せない内容を提示でき、深いつながりを持つ事が可能かもしれません。これは一つのアイデアですが・・・。
何を行うにせよ、それ相当の努力と労力を投入しなければ発展と成功はないと感じています。
(2002/4/13)
鯛工房 / 〒869-2504 熊本県阿蘇郡小国町西里 1608-2
Copyright 2005 Tai-workshop / All rights reserved.
