家具制作鯛工房

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孤雲野鶴。鯛工房代表が綴るブログ。暮らし、生活、家具、社会。

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日曜大工・アマチュア流家具作り

■アマチュアとプロについて

木工作に関し、アマチュアの方の家具や日曜大工に関する関心は非常に高いものがあります。そのようなアマチュアの方を対象にした多くのサイトは大変元気で、プロも参考になる内容を持っていて感心します。私も長い間、アマチュアとして様々な木工作をしてきました。計画したものを思うように作ることが出来ず、いつも自分の技術の未熟さに焦れたものです。そして、見栄えも、実用性もプロが作るようなレベルのものに憧れていた記憶があります。
現在、アマチュアのサイトを訪れますと、ときおり素晴らしい出来栄えの家具を発見できます。そして多くの方がプロ以上に研究熱心です。
様々の木工関連サイトや専門誌で情報の入手が容易、工具・機械類の種類が増え、価格も安く購入しやすい、DIYセンター等での木材加工サービスが受けやすい、個人輸入などによって便利や工具を入手しやすいなどの理由で高度なものを作る環境は整って来ているように思います。アマチュアの方のレベルアップは喜ばしいことです。それによってプロもうかうかしてはいられなくなります。全体の水準が上がる事は大切な事です。

以前観たテレビ番組の中で、ある職人の方が「プロとは何でしょう?」と問われ、暫く考えた後、同じ物を、同じ品質で、速やかに作ることができることだと答えました。私は感心しました。そこにはプロとしての経験と技量が集約された名回答があったからです。
プロは品質の高いものを作ることは当然です。しかし、時間を掛け過ぎてはなりません。品物が高価になりすぎて顧客を失いかねません、もしくは利益率が低下するからです。製作速度は技能そのものです。これには慣れや経験が必要です。
これに対峙する位置にアマチュアの物作りがあります。毎回違ったものを、時間に捕らわれることなく、自分の喜びのためだけに作ることができます。その喜びは大切です。

モノ作りは喜びです。そして、それは文化です。ですから、プロやアマチュアの垣根を越えた、たくさんの情報のやり取りがなくてはなりませんし、今以上にその環境が整備されなくてはならないと思っています。日本にはまだまだ情報が不足しています。家具や建物を作りたいという人々が、容易にその希望を実現することができるよう、情報や資材がもっと容易に入手できなければなりません(ホームセンターの発達で資材の入手はものすごく容易になりましたが)。
多くの理解者がいてプロの仕事もまた光ってきます。情報の公開は多くのアマチュアの方の理解のためには必要です。隠す情報こそ暴いてしまえば大したことはないものです。また、理解者が増えるという事は反面において厳しい評価もされてきますが、大局的な視点に立てば、このような状況は大切だと思います。

■アマチュアの家具作りを妨げるもの

アマチュアの方の家具作りを妨げている問題点を挙げてみますと、

1.資料の不足(分かりやすいテキスト等)
最近はウェブサイトや専門雑誌などを含め、参考になる資料が増えてきていると思いますが、実用的なテキストの絶対量は、まだまだ不足していると思います。ただし、資料が少ない背景には、それを必要とする人々の数が少ないという背景がありますので、資料の不足ばかりを批判できませんが・・・。
また、私も記事を書いていますから他人事ではありませんが、私が感ずるのは、専門誌に読んで分かりいにくい制作記事が多いということです。木工にはポイントが多いので各レベルに合わせた解説をしなければ理解してもらうのは難しいのではないかと思っています。
関連事項ですが、アマチュアに向けて、手ノミ、手ノコで柄と柄穴を加工していく制作方法が載っていたりしますが、私はまったく無意味と思っています。アマチュアの方が手ノミや手ノコで正確に加工できるはずがありません。時間がかかってうまくいかなければ、木工が嫌いになるばかりです。
2.手工具を使うのが難しい
手工具を使いこなせないということは、木工を始めるに際しての大きなバリアーになっていると思います。また、手工具が使えないことで、木工に対して二の足を踏んでいる方も多いと思います。
主な手工具は、鉋、ノミ、ノコギリ等ですが、特に問題なものは、刃物の研ぎと鉋の使い方だと思います。道具の使い方こなしも、研ぎも時間をかけたトレーニングが必要となってきますから、最初は使いこなせないのはしようがないと思います。
研ぎに関しては、替え刃式のツールを使うか、刃物を固定する角度ゲージを用いて磨ぐという方法で研ぎの問題をクリアーするしかないと思います。海外には角度ゲージのいいものがありますから、代行業者や個人輸入等で購入すれば良いかと思います。
替え刃式の道具ですが、ノコギリは替え刃式がすっかり定着し、大工を始め多くのプロが使用しています。カネフサ製の替え刃式の鉋を試したことがありますが、これはお勧めの品物です。逆目もほとんど立ちません。プロでも使える品質だと思います。台はきちんと調整されていますが、伸縮によって狂っている場合がありますので再調整が必要な場合もあります。
何れにせよ、最初は替え刃式の道具の用いるのがいいかと思います。余裕が出てきたら研ぎに挑戦するのもいいでしょう。
鉋を使えるようになるのには時間がかかります。替え刃式を購入すれば研ぎからは開放されますが、問題は使いこなしです。これには多少の腕力や背筋力が必要です。硬い材料に鉋がけを施すには、鉋の調整も重要ですが、鉋を材に十分に押さえつけて引く筋力が必要です。鉋の使いこなしはも慣れるしかありません。
余談ですが、私は木工所で家具職人として働いていましたから、鉋には慣れましたが、個人的には、鉋はもっと進歩してもいい道具だと思っています。調整と刃の管理に経験と時間がかかり過ぎると感じているからです。何度も新しい鉋についてデザインを試みたものです。そんなわけで、カネフサの替え刃式の鉋の試みには評価しています。もっとも、このような意見は日本の精神風土では受け入れられないでしょうが・・・。特に面鉋などは替え刃式は有効かもしれません。
私が伝統的な日本の鉋を使っているのはサンドペーパーより早く、面がダレずに正確に仕上げられるからです。それ以外の理由はありません。鉋でなければ綺麗にできない作業は確かにあります。そのためには替え刃式があります。後は、サンダーやスクレーパー(これは便利ですので是非使って下さい)や、他の工具を創意工夫によって活用すれば良いと思います。
3.木工技術への誤った理解
誤解を恐れず言えば、何でもありでOKと、私は考えます。ただし、最小限気をつけなければならないのは、木材の伸縮と、木取った材自身が定規になるという木工の基本です(注:漠然として分かりにくいかもしれません。いずれ説明するつもりです)。
その基本さえ押さえたモノ作りをすれば、構造に関しては何でもありでいいと思います。つまり、手持ちの木工機械、工具の能力、自分の技能に合わせて作り方をアレンジし、簡単に組み立てるか、見栄えよくするのか、あるいは丈夫にするのか選択すればいいのです。その中で、テキストからの情報を含めてエキスパートの意見は参考にはするけれども、全てを受け入れる必要はまったくないと思います。何故なら、売り物を作るわけではありませんし、持っている道具や技術がありますので、その事情を知らない第三者の意見は参考程度でいいのです。大切な事は楽しんで木工をし、次ぎへの意欲が沸いてくることが重要です。不都合は次の段階で改善していけばいいことです。
参考事項ですが、ジョイントも柄構造を選択する必要は特に無いと思います。ダボや木ねじ、あるいはビスケットジョインターもあります。ビスケットジョインターは簡単で有効です。二枚(二重に)使えば、ずれもほとんど生じませんし、強度もあります。
マレーシアに来て、こちらの椅子を見て驚いたのですが、中級から高級タイプの椅子の基本構造はスリーピースです。前足ユニット、座ユニット(台形に組んであります)、後脚ユニットです。これをJCB(ジョイントコネクターボルト)や、木ネジで互いに締結します。安いものは、前足ユニット・後脚ユニットは同じですが、座ユニットが四角に組んだものではなく単なる幕板で、やはりJCBなどで前後ユニットと結合します。輸出が主なため、このようなノックダウン構造になっているのですが、これは伝統的な工法をまったく無視した構造です。しかし、それなりに持ちます。緩んだら増し締めすれば良いのです。これはアマチュアでも割と簡単に見栄えのいい椅子ができる方法だと思います。
繰り返しますが、アマチュアの方は伝統的な工法に縛られる必要はまったく無いというのが私の持論です。先ずは作れる所から作り、その喜びを知ること、これが最初だと思うのです。

■電動工具・木工機械を揃える

ノミ、ノコギリで柄と柄穴を加工していく制作方法はアマチュアには難しいと述べました。今時のプロでもこの方法で加工することはほとんどありませんから、私を含め、今時のプロでも難しいのではないかと思います。それは私の親方の時代でした。
少しづつ工具や木工機械を購入すべきだと思います。そしてそれらを利用する以外に経験の少ないビギナーの方がまともな木製品をどうして作れましょう。
最初に木取りに必要な機械として以下のものがあります。これらは基本中の基本機械です。シックネッサー(厚さ決め機)、サーキュラーソー(縦挽き機:スライディングテーブル付きだと横切りに便利)、ジョインター(手押し鉋機)です。
使用機械は違いますが、私の木取り手順は以下の通りです。材料を縦挽きし(サーキュラーソー)、平面を出し(ジョインター)、厚さを決め(シックネッサー)、直角を出し(ジョインター)、幅を決め(サーキュラーソー)、長さに切ります(サーキュラーソー:クロスカット)。さらにチゼルモータイザー(角鑿機)があれば柄穴開けが容易です。これらは、安価な小型の機械が売られていますので購入されることを勧めます。正確な木取りが正確な仕上がりを決定するのです。日曜大工センターなどで木取りをしてもらう場合は直角に気をつけてもらいます。
これらに加えて、自分の制作内容に合った機械を購入します。例えばバンドソーやウッドレーズ(木工旋盤です。さらに、目的に合わせ、様々なパワーツール(電動工具)を揃えていきます。
欧米では、アマチュアが工房を持ち、ある程度の木工機械を揃え、立派な品物を作っている例を目にします。理想です。

■治具について

機械が増えていき、制作環境が整ってくると同時に、正確な治具類の制作も可能になってきます。治具は安全、正確、かつ同じ精度のものを複数作るためにはなくてはならないものです。ぜひ、正確で綺麗な治具を作ってもらいたいものです。
私は治具も作品だと思っています。治具も角をきちんと取り、後でコンヒューズしないよう説明を入れ、綺麗で安全で、その場しのぎではないものを心掛けたいものです。日本のプロは多くの場合、質の高い治具を用意しません。治具を見ると、道具と同じようにその人の作る品物の質がわかります。これは間違いありません。

■図面を引く

制作に入る前には図面を書くことを勧めます。これはぜひ励行して下さい。理由は次の三点です。第一は、デザイン面の検討です。特にディテールは原寸で検討します。大まかなものは新聞紙にマジックで書いても構いません。要は確認できればいいのです。第二点は、構造のチェックです。柄と柄がぶつかる部分など、より詳細な検討が可能です。第三点は、データーとして残せるため、後で参照することができ、構造の標準化につなげる事ができます。作業の標準化はエラーを防ぎ、作業の効率化をもたらします。

用紙は1mm方眼のグラフ用紙を用います。サイズはA4サイズとロール紙の二種類を使うのが便利です。A4サイズはディテールの検討用で、ロール紙は原寸確認用です。

アマチュアの方が単品で品物、特に箱モノ(箪笥や机など)を作る場合は、最初に外形や、扉や抽斗の大まかなサイズは決定しますが、最初から図面上で棚口や帆立の厚みなどの寸法までは決定しません(数が多い場合は別です)。これは、図面通りに部材が仕上がらない場合が多いからです。主要部品を正確に木取ったとき、その部品の寸法は初めて決定されるわけです。例えば、縦框の厚さを25mmに予定していたのに23mmにしか仕上がらない場合があります。その結果を踏まえてディテールの寸法や扉などの寸法が決定できるわけです。最初に25mmで計画しておきますと、もし計画どおりに仕上がらない場合、後で図面を書き直さなくてはなりません。

アマチュアの木工に対する私なりの考えと実作業までを簡単にまとめました。私も建築に関してはアマチュアですが、増改築は行ってきましたから、本業以外での楽しさはよく理解できます。ご意見等ありましたら是非お寄せください。
(2002/6/22)


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