家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

トレンガヌのダフ屋

元旦から親子四人、クアラ トレンガヌへ行ってきました。マレー半島東海岸北部、タイ国境まで割と近いところにある町で染物で有名です。マレーシアの民族衣装の染付けを行っている工房や品物を見学するために出かけたのです。嫁さんが多少染色をやっていて染物に興味があり、マレーシアに来たら染付けの現場を見たいというのがの彼女の希望でした。住居関係も多少一段落したことですし、せっかくの休暇ということもあって出かけたわけです。僕はかなり億劫でしたが、ここで彼女のプランに従っておかなければ、後々やばくなるような気がしたからです・・・。

クアラ トレンガヌまでクアラ ルンプール(KL)からバスで約8時間弱の旅です。朝9時半に出発し、夕方5時頃に着く予定です。これで日本円で約750円/大人一人、という安さです。この長距離バスはたくさんの会社が色々な路線を運営していて、KL からマレーシア各地を結んでいます。マレーの人々はこのバスを里帰りに利用するそうです。

トレンガヌのバスステーションも乗降客でごった返していました。そこで、帰りのチケットを買おうとした我々は青くなってしまいました。どのバス会社もチケットは全て売り切れだったからです。帰りのチケットは現地で確保できるだろうという、読みの甘さがまたトラブルに・・・。これでは帰れません。

困り果てている我々に近づいてきたのが、眼光鋭く、みるからにガラの悪そうなダフ屋のおっさんでした。
おっさんは、チケットは自分の所でしか入手できないと、きっぱりいうのです。我々から帰りの希望日を聞くと、胸のポケットから皺くちゃの商売用チケットの束を取り出し、一枚一枚チェックを始めました。我々の帰省予定日の同じバスのチケットを彼は3枚しか持ち合わせていませんでした。残りの一枚は必ず同じものを手に入れるから、1枚1050円でいいからとりあえず3枚買っとけ、シュワー(sure)、シュワーというのですが、そんなことを信用できるわけがありません。

取り合えず、予約を入れておいたホテルにチェックインし、再度、チケットを探しにバスステーションへ来ました。夜行便の出発時刻が近づくにつれ、人の数はさらに増え、チケットを求める多くの人でカウンターはごったがえして身動きもできない状態です。広場もすごい数の到着出発便のバスで溢れ、多くの屋台が開かれ、沢山の人々が飯をほお張っています。そんな混雑が我々を一層焦らせ、不安にさせます。
ダフ屋のおっさんは、オレしかいないよ、チケットを手に入れられるのはという感じの圧力を放射し、そのへんな自信が、いっそう悪徳というイメージを助長させ、関わりを持つ気にさせませんが、条件、出発日を変えて各バス会社に問い合わせてもチケットはありません。努力が徒労に終わりかけた頃、ダフ屋のおっさんのチケットが売れてしまえば、本当に当分帰れなくなってしまうという不安が現実的になってきました。取りあえず 2 枚のプレミアムチケットをおっさんから購入しました。後の2枚は明日用意しておくから大丈夫だとダフ屋のおっさんは繰り返し言いましたが、それは信用できませんでした。
嫁さんは、明日からの期待のプランの前の深刻なトラブルに真っ青です。

その成り行きを見ていた中国系マレー人のおじさんが僕達に近づいてきて、一社だけ運行していた臨時バスのチケットを紹介してくれたのです。ボール紙にマレー語で「臨時便」と書かれたその案内を僕が理解できるわけがありません。あまりに頼りなげに見えたのでしょう、そのおじさんは交渉までしてくれたのです。明日なら、同じ便ではないが、同時刻発車、同時刻・同場所到着、というバスに一枚ずつチケットがあるようだが、どうするか?、と聞くのです。後は交渉で、同じバスにしてもらえるかもしれないといいます。同じバスに乗らなくても同じところへ行くバスだから子供でも大丈夫だと、何度も言ってくれたのです。さしあたり、我々にはそのチケット以外には考えられませんでした。子供だけをその便で帰すことにし、そのチケットを購入しました。さらに、その後もバス会社のドライバーのマネージャーに座席交換のことを頼んでくれたのです。
今まで泣きそうになっていた嫁さんは、こんどは感謝と安堵で泣きそうになって、「トリマカシ、サンキュウ」と、マレー語、英語で何度も何度もお礼を繰り返したのです。

翌日になり、ハリラヤと正月休みの影響で、仕事をしている工房はほとんどないだろうということがわかり、バティを売っている大きな市場に行きました。市場には、ものすごい数のバティ類の小売店がありました。しかし、KLにある国営のクラフト館で見た、簡素で素朴なものは少なかったのです。現代デザインのバティはカラフルなのです。
翌日も見て回る予定だった嫁さんだったのですが、工房が開いてないこともあり、予定を繰り上げて帰ろうということになりました。ただし、今日の夜行のチケットが取れればの話です。

夕方、再びダフ屋のおっさんを尋ねました。信じられないことに、おっさんは約束どうり残りの一枚を同じバスのものに変え、合計二枚を用意してあったのです。これで四枚同じものが揃うわけですが、我々はすでに二枚の臨時バスのチケットを購入しています。申し訳ないことをしましたが、しょうがありません。その上身勝手な相談ですが、僕は昨晩買ったチケット二枚を今晩のものへ交換してもらうことはできないか頼んでみたのです。おっさんはいやな顔をするでもなく、9時半頃、来るか電話してくれ、間違いなく同じシートを用意しておくからと、いってくれたのです。

子供が一日早く帰ることになった後、エアコン付き、ダブルベット、トイレシャワー付き一晩1050円の安宿に移動していた我々は、今晩のチケットが取れたらそのまま帰るし、取れなかったら戻ってくるということを担当に了解してもらい、帰り支度をして宿を後にしました。そして再度、ダフ屋のおっさんを訪ねたのです。
僕を見つけたおっさんはこっちへ来いと手招きし、カウンターの端のほうへ僕を連れて行き、おっさんから最初に買った明日のチケットを僕から取り上げ、ほんの少し得意そうに胸のポケットからヨレたチケットを取り出し、日付けや会社名、出発時刻にシート番号を確認させた後、そのチケットを僕に渡してくれたのです。もちろん今晩の、そして同じシートのチケットです。
きっちり約束を守ってくれて、手数料も要求しなかったおっさんに、せめて僕は、おっさんの吸っていたローカルタバコを買って渡し、別れたのです。
嫁さんの感激は、言葉にはなりませんでした。見かけによらないおっさんの、信じられないほどきちんとした仕事への感謝が言葉を無くしていたのは僕も同じだったのです。

困ったら何時でもいってくれといっていましたから、トレンガヌでチケットに困ったら、ここの遠距離バスステーション唯一のダフ屋のおっさんに申し込めば助かるかもしれません(注1)。おっさんは怖い顔をし、チケットカウンターの前で朝から晩までうろうろしているのです。

さて、次はコタバル(タイ国境の町)、その次はタイに行こうと、嫁さんは元気に言うのですが・・・。
(2001/1/3)

注1)ダフ屋
気をつけて見ていましたが、おっさんはキャンセルのチケットを主に売っているようでした。各バス会社の窓口係りはキャンセルのチケットをそのおっさんに渡しているのです。窓口係りにもキャッシュバックがあるのかもしれません。ただし、この文章を読んだからといって、まるっきリダフ屋のおじさんを信用しないように、痛い目にあっても責任は持てません。

注2)
子供達も交渉して二人は同じバスに乗ることができました。

注3)バティ (バティック)
バティは日本人には少し派手過ぎるような気がします。古いものにはすごく良い物がありましたが、トレンガヌのマーケットでは見ることができませんでした。

注4)バスステーション
トレンガヌには遠距離バスステーションは二ヶ所あり、この話の中のバスステーションはスルタン・ザイナル・アビディン通り (Jaran Sultan Zainal Abidin) にあります。

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