一輪車
東南アジアの他の国々と同様、マレーシアもバイクが多い。クアラルンプールなど都市部はかなり交通渋滞がひどく、混雑した車の間をバイクがすり抜けていくので慣れないとかなり危険である。しかし、このバイクが車に置き換わると、もっと渋滞は激しくなるだろうから、良し悪しかもしれない。
しかし、バイクは都市部では単なる交通手段かもしれないが、私の職場のある郊外では、移動手段だけではなく輸送手段としても大いに利用されている。地元の人々は、実に様々なものをバイクに積んで運転している。
その中でも、オートバイで一輪車を運んでいたのは驚きでだった。遠くから見るとそれは大きなウチワか盾のように見えてなんだかわからなかったが、近づくと一輪車だった。運転手によって、縦にしたり、横向きにしたりして、自分の背中にくくり付けて走っているのだ。縦にして運んでいる場合は一輪車のハンドルが上向きで、盾か、さながら帆のように見える。横にしている場合はハンドルが横方向に飛び出し、引っ掛けそうで大そう危険である。いずれにせよかなりの風圧のはずで、よたよた走っている。
ある日、涼しい顔で運転するおっさんとは対照的に、かなり厳しい顔つきのおばちゃんを乗せたバイクに遭遇した。おばちゃんの両手は後ろに伸びてなんとなく不自然な姿勢である。そして、その先にはおばちゃんに引かれた一輪車が、舗装はされてはいるが、かなりのがたがた道を飛び跳ねながらバイクにくっついてくるのだ。時々バイクに乗る僕は、後ろ手で一輪車を引いたおばちゃんの不安定感はよくわかる。
それは上体を固定できないおばちゃんの、多分両足でしっかりとオートバイのシートをはさみ、後ろに引き落とされないように腹に力を入れて一輪車のハンドルを握りしめ、一生懸命ふんばっていた気合の表情だったのだ。
(2001/2/2)