家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

ボーペンニャン

4月に入るとむちゃくちゃ暑くなった。おまけにたいへん蒸す。それほど高くないトタン屋根の実習場はいるだけで汗が吹き出てくる。ただし、ローカルの人々は我々日本人ほど汗をかかない。不思議だが適応だろう。

ところで、子供用の椅子の制作指導をカウンターパート(C/P)から頼まれ、4月はその制作に追われた(注1)。
全部で15脚。その内6脚は今月初旬に(5月)ビエンチャンで開催される全国職業訓練校展に出品することになっている。ただし、予算も無く、校長の命令ということもあって、使われなくなった古い木製机を再利用しなければならない。椅子に様々な材料が混じることになるが、実習場の一画が少し片付くのは救いである。

結果的には、労力の割りに使える部材は少なく、見えない部分にあった釘を数本切りブレードを傷めた。また、学生があまり考えずに木取ったために後足が短くなってしまった。往々にしてこのようなことになるのだが、すべからくボーペンニャン(気にすんな)なのである。

子供用椅子 この学校で作る椅子のデザインはサイズに関わらず同一である。子供用の椅子も小さいだけで同じ構造である。
今回の制作する椅子も、寸法、材料のサイズ共に彼らが作っているものと同様にした。変更点は背もたれの形状と座面(少し絞った)である。
(W:300/フレームSH:300/H:530)(mm)

座面は上から見ると前広がりの台形なので、サイドエプロン(側幕板)の柄加工は少々面倒くさいし、サイドストレッチャー(側貫)も付いていて後脚は下に細くなっているので、サイドストレッチャーの導付き面は四方転びとなり、彼らが考えるよりも制作は厄介なのである。

これは木工に携わっている方なら理解できると思うし、日本の工房家具でも最近はこの加工を嫌って座面は台形でもフレームは直角で作るという「チョンボ」椅子を多く見かける。
しかし、彼らがこの椅子を作る場合、恐ろしいことに、ややこしい角度の付いた柄の加工はせず、普通の柄を作って組み立ててしまうのだ。よって原寸図面も描かない。

赴任当初からこのデザインの椅子の作り方を疑問視していた私は、この椅子の正しい作り方を教えるちょうどいい機会なので、スタッフ1名を専属でつけてもらい、制作を進めていった。

先ず原寸図、テンプレート及び治具制作(彼らはこのようなものは作らない)、木取り、加工である。しかし、四方転びの加工がなかなか理解してもらえない。どうしてこのように面倒な加工をする必要があるのか、従来の方法で何が悪いのか、内心疑問を抱いているのではないか、今後二度と再び、私が行った加工をしないのではないかという不安がよぎる。時々、確信を持ってそう思うときがある(注2)。
経験者ならお分かりかと思うが、ビギナーにとり四方転びの柄は、かなりコンフューズする加工である。この椅子制作についても、将来的には訓練シラバスから見直す必要があると思っている。

何処の国でも同様だが、木工技術を教えるということもまた、そう簡単ではない。
様々な問題があるのだが、そこには技術レベルの違いはあれども地元には地元の技術が確立されており、海外の木工技術を知って客観的な位置を知らない場合(それがほとんどではあるが)、その伝統にいささかの疑問を抱いていないのが普通である。
そこで、我々との間には必ず相克が生まれる。これを超えていくのは、我々の技術を良いものとして一方的に押しつけるのではなく、彼らの方法の理解と自尊心の尊重、相互信頼の上に立つ、時間をかけた技術移転しかない。特に木工は我々SVの技能が問われる場合が多く、信頼されるまでには厳しい面も多い。
一種のせめぎ合いを通しながら説得していくというわけである。

私は基本的に自分がやってみせる。上手くいって当たり前。しかし時々間違う。そんな時、彼らは実に嬉しそうに、ボーペンニャンを繰り返すのである。

注1)
学校は土日が休みで、午後は1:30から始まりほぼ4時に終わるが、3:30位から掃除が始まる。木曜日の午後は全校の清掃日で午後の実習はなし。おまけに4月はラオスの正月が入り、1週間は仕事にならない。さらに限られた機械を取り合うので加工時間は限られてくる。ひと月あっても時間は足りない。最終的にはC/Pと共に休日も作業にあたった。

注2)
貧困に大きな原因があると思う。何しろ物があればいいという状況である。品質が良くても高価なものは、多くの庶民は買うことができない。早く、簡単に作り、そして安く売ることができればいいのだ。多くのジープはワイパーやパーキングブレーキ無しだが、部品が高価で買えないせいだ。とりあえず乗れればいい。同様に、ややこしい加工より、簡単で早くできたほうが良い。柄はクランプで締めて釘で補強してOKなのだ。ただし、美しいものは評価される。我々の活動も、先ず評価されなければ始まらない。
(2005/05/08)

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