家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

はじめに

年を追うごとにモノ忘れがひどくなっています。例えば、機械のところから作業台まで何かを取りに行き、そこで他のものに気を取られると、どうして自分がここにいるのか思い出せないことがあったりします。
NHKのテレビバラエティー番組で物忘れをテーマにしたものが放映されました。その中で、高齢のお年寄りがどれだけの記憶能力があるかというような試みが行なわれました。たぶん、一週間で英単語をどれだけ憶えられるかというようなことだったと思います。外国の英語教師から直々に指導を受けるのです。しかし、英語の日本語読みならいざしらず、正しい発音を聞き、同じように発音するというのはなかなかできるものではありません。おばあさんは真剣ですが、どうしてもポテイトがポセンチョにキャロットがキャベツになってしまうのです。僕は笑ってしまいましたが、若い英語教師の表情に困惑と諦念、絶望と無力感が走るのです。しかし一週間後、今村ヤスさん九十二才はやってくれたのです。驚くほど多くの野菜の名前をマスターしていました。
努力は感動を呼びますが、何回辞書を引いても僕は少しも英単語を憶えません。

いいものとはなにか スカンディナビア工芸展の問いかけるもの (4)

日常生活に役立つ工芸については、日本でも戦後まもなくその必要がさけばれ、昭和二十二年に当時の商工省工芸指導所は「人間の社会が幸福になり、人類文化が向上していくためには、科学者や技術家が大衆の生活のために働くべきだ」と提唱、「芸術家は大衆の生活に即した芸術を、企業家はつねに有力にして美しきものをできるだけ安く生産して大衆に供給すべきである」と、といたのだが、はやばやとその理想はむなしくなり「科学技術は人間闘争の道具に、芸術は実生活を離れ、生産は企業家の利潤追及の手段でしかない」という「あまりにもみじめな日本の姿」になってしまったのである(「工芸ニュース」昭和二十二年七月号)。そのような状態からいまだに抜けきっていないのが、日本の工芸の現状であろう。
こうしたみじめな現状を象徴的に示していたのが「スカンディナビア工芸展」の展示方法だった。手にとって実際に使ってみたり、座ってみなければほんとうのよさがわからない工芸品を、まるで高価な美術品のように、鑑賞者(工芸の鑑賞者というのも変なのだが)から遠ざける「絶対にお手を触れないで下さい」という、監視人のきびしい声。「もの」がいきいきと輝きをます北欧の現実の生活現場を実物でなくともパネルやスチール写真、あるいは模型でさえ見せようとしない、いかにも無趣味なお役人的な展示方法。まるきりカタログまかせで、日本の作り手や使い手側の質問に答える人はだれもいないという非人間的な展示会、日本の美術館運営の後進性、公共美術教育の立ち後れといってしまえばそれまでだが、こんな閉鎖的なことでは、日本でなんのために世界クラフト会議を開催したのかと疑いたくなる。
「知力の基礎は、はつらつたる感性である。感覚は依然として鮮明で、知能はつねに活発なかかる人たちのみが、将来の産業主義の世界に安定し、充実した社会を形成することを念願しうる」と、英国の美術評論家ハーバード・リードは言う。「ねば土や、さっくりとした木材の質や鋳金の張力などを、指の感触で受けとらねばならない−−我われの手と眼とが木理(きめ)、石理(いしめ)との間で感覚的に接触するのでなければならない」。ハーバード・リードは、芸術感覚をみがくうえで、手ざわりの大切なことを強調している。
「いいもの」を見分ける「手」の感性が萎縮し、頭でっかちになってしまったら…。
リードはそこに天明の衰退を予言し、我われは、粗悪品の氾濫を憂慮する。見るだけの工芸展は、頭と手の有機的な結びつきを切り離し、感性を萎縮させる。このような展覧会のありようは、大金を投じて泰西名画を購入して文化政策こと足れりとする考えと根は同じである。技術的な功拙を問題にする前に、日本の工芸品の貧弱さの原因をそうした文化的・社会的環境のなかで洗い直してみることがこのさい必要ではないだろうか。

相当に古い資料ですが、現在でもこの状況は変っていない気がします。また、この記事によって僕はウィリアム・モリスという工芸家を知りました。それより前、旧ソビエトの反体制作家ソルジェニーツィンの西側文明批判の演説のなかで、「自らの意思に基づく自己抑制」を通じて、人間社会は「物質崇拝」から抜け出し、より高い目標を目指さなければならない。云々…という記事を読み、深く同感していた私は、モリスの主張に同じ理念を見、興味を持ったわけです。
その後、偶然にウィリアム・モリスの勉強をすることになったんですが、彼の理想と実践はその後アール・ヌーボーやアール・デコが活躍する領域を用意し、その流れはさらに、近代デザインへとつながっていくわけです。欧米で、現在でもモリスらの行なったアーツ&クラフト運動の家具が作られたりしているのを見かけると、その影響の大きさが判るような気がします。機会があればモリスの紹介をしたいと思っております。

■参考文献:無尽蔵 NO.7 1978

工房を建てる (1)

建築現場に着いたとき、彼は便漕用の穴を掘っていました。少し疲れたそうな表情で、だいぶめげたと言っていました。掘り始めてすぐに十センチ以上もあろうと思われるベタ打ちされたコンクリートの層がでてきたりで、なかなかに手こずっているのです。それよりも実際に現場に立ってみると、住宅と工房それぞれ二十坪と二四坪の敷地というのは、そうとうな重みとしてせまってきます。それを彼は同時に、しかも基礎から自分の手で行なうというのです。ある友人がそれを建て終わったら死んでしまうと言ったというのは、大げさではないと僕には感じられました。
整地をおえ、レベルを出し、栗石を入れるための地ならしが終わった後の穴堀りです。土木作業用具の積まれた軽トラ、周囲に散乱したスコップにツルハシ、すっかり日焼けし、ごそごそとひしゃげたエコーを取り出して着火するさまは土方のおっさん以外、他に想像できませんでした。

福岡県甘木市で工房BANBAを主宰する馬場正則さんが、同県夜須町に土地を購入し、独力で工房と自宅を作り始めました。最近でも、ウチをたずねてきてはいずれ独立したいという人はポツポツいるわけで、そういう人を含め、馬場さんの試みはおおいに我々の参考になるはずです。しかも、彼は建築科出身というアドバンテージはあるにせよ、大工仕事は専門ではなく、その意味でも我々に条件は近いわけで、工房の設計意図や完成までの手順、方法などを馬場さん自身によるリポートで掲載していく予定でいます。乞う御期待。

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