家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

はじめに

その後も続いた戦いでツグミの敗色は決定的となり、実際、戦いのシーンでのツグミは痛々しくさえあったのですが、勝敗がほぼ決した後、ツグミはバトルを避けるようになり、ヒヨドリの気配に物影に退避し、いなくなった後に餌場に戻るようになりました。そして、渡の時期がきたのか彼等はふいに姿を消し、ツグミはアンタにいじめられる私のようだと、妙に肩を持っていた女房は餌をまくのをやめ、かわって春の気配が…

物に値段をつけるとき (1) 谷 進一郎

個人の注文で家具を作るとき、色々な時点で注文主に対してその品物の値段を示さなければならない。まず最初の打ち合せの時である。それはあらかじめ注文したいという連絡を受けて打ち合せる場合と、偶然の出会いで色々話をするうちに、参考までに値段を聞かれる場合がある。
打ち合わせにいくと値段にはこだわらず良い仕事をして下さい、というおおらかな人もいないわけではないが、大方は、いくら位でできますか、と聞かれるので、大まかな見積もりをその場で答えることになる。しかし同じものを注文されることがまれなことなので、どうしても言いながら不安になる。多少高いならばまだ良いが、安く言ってしまった見積もりを後で訂正するのはとても言いにくい。なにか言い分けをしなくてはならないような気持ちにさせられるからである。注文主の顔を見ながら様々に考えを巡らし、思い切って言った値段で相手が高いと思ってしまったか、安いと思ってくれたのか。
相手の予算をあらかじめ聞いてみる場合もあるが、大体がこちらで先に値段を言わなければならないようだ。相手の予算を聞いて、こちらの頭の中で見積もった値段より高ければ、それだけ高く評価してくれているのかと悦に入りながら受注することになるが、安い場合がまた困る。面と向ってその予算では無理だと言い切るのは勇気がいるわけで、親しく話してしまったりすると、なんとか相手に喜んでもらいたいと情が移るものである。その辺をわずらわしいと感じて、使い手とできるだけ接しないように、あるいは注文生産をしない作り手もいるようだが、様々な出会いを楽しんでいる者としては、一人でも多くの人に喜んでもらいたいと思ってしまうのである。そう思っても時には、値段だけでなく、色々なギャップがあって、注文が不成立のこともある。

展示会などでは、簡単に話し合った人が百人とすると、見積もりまでする人が十人、注文が成立するのは一人ぐらいではないかと思えるほど、注文に結びつかない話が多い。しかし、逆に百人の人と話し合えば一人の注文がもらえるのだから、仕事がないと嘆く前に外に出て人脈を広げることだと思う。だから、偶然の出会いで値段を聞かれる場合、たとえ相手が注文してくれそうに見えなくてもおろそかにしてはいけないわけで、その人が親に、あるいは知合いにすすめてくれて、注文がくるかもしれないのである。
いままでに作った品物を写真にとっておいて、そのアルバムを持ち歩いているが、それを見てもらいながら話し合うと、これはいくらぐらいですかと聞かれる。最近作なら答えやすいが、何年か前になると、その時納めた値段は憶えていてもこれからつくろうとすると、いくらぐらいと答えておこうか、一瞬考えてしまう。そこで何割か増した値段で答えておくと、いくらと言ったか忘れてしまうこともあって、あとで困るのである。あらかじめ値段表をつくっておけばと思われるかもしれないが、同じものをくりかえすことがまれな仕事である。ついついその辺がおろそかになる。
いずれにせよ、話し合いが進んで、注文主に大まかでも見積もりを示すときがくると、持ち帰ってきちんと見積もってみないとはっきりとは言えませんが、と前置して二十万ぐらいだとか、三十万ぐらいだとか言うわけである。もちろん品物によって違う値段だが十万円までは一万円単位、二十万円までは二万円単位、五十万円までは五万円単位、それ以上となると十万円単位で大まかに言ってしまっている。

何年かやってくれば、色々と苦汁をなめてきておかしな見積もりもしなくなり、その場の大まかな見積もりと、持ち帰ってきちんと出した見積もりとの差も少なくなる。二十万円でできませんかと相談され、できるだけ手をかけずに上手くやればやれそうだと思い引き受けてみたら、材料代で八万円もかかった上に一ヶ月も日数がかかり、その上徹夜する破目になったこともあって、安請合いは自分の首をしめることと肝にめいじている。
我々の仕事では安くつくってといわれても、ある限度以下にはつくれないのである。安くつくってほしいという人のなかには、鉋がけが三回のところを二回にしてくれないかというような人もいるが、こればっかりはやるかやらないかのどちらかであって中途半端はやったことにならない。無理な注文である。大体注文主が値切る場合でも注文主の求めは質を下げずに値段だけ安くしろといってるわけで、安いから質を落とし、手を抜いた仕事をしては、納めても注文したより以下の仕事だといわれてしまい、結局使い手も作り手も損をすることになってしまう。いずれにせよはじめにきちんと話をつけておかないで引き受けると、自分で納得いかない仕事になって納めるときに出来の悪いのを出来の良いような顔もできず、正直に顔に出て余計なことまで言ってしまう。請求する値段もついつい安くしてしまうから、自分で納得いく仕事をする方が結果として良い。
それから、受注したら見積もりをキチンと相手に伝えて確認しておくことは大切なことで、あいまいなままでとりかかると納品時のトラブルの原因になる。こちらは十五〜十八万円位かかりそうですといったつもりが、相手は十五万円でできると聞き取り、納める時に十八万円になりましたというと、話が違うといわれて、お互いに気まずい思いをすることになることがあるからである。安めに見積もってあとで訂正するより、高めに見積もってあとで値引きした方が同じ値段であっても気持ちは違うものである。
それから納品時に個人の注文主から値切られることはめったにないが、業者や商売をやっている人のなかには、それが習慣のごとく値切ってくることがある。こちらが誠意をもってできるだけ安くつけたつもりの値段にケチをつけられたようで面白くない。相手の商習慣はどうあれ吹っ掛けているわけではないのだから断固つっぱねる。しつこい時は喧嘩してもいいと思うぐらいだ。しかし場合によっては十五万円ほしい時、十八万円から三万円値引きとした方が有効なこともあるし、将来同じものをたのまれても問題が少ないようで、ただ頑固にやればよいものでもないとは思う。
(以下次号)

[編注]
木工通信 1982 NO.5(編集:角張和敏、谷進一郎 等/1981/1 NO.1〜1983/6 NO.8 まで)に掲載されていました谷さんの記事を承諾を得て掲載しました。この問題は大切な事柄にもかかわらず、なかなか出てきにくい記事(意見)でもあります。非常に率直に思うところを述べておられ、これからの人にも大いに参考になると思いますので転載させて頂きました。古い記事ですので、本人はそのままの転載には多少不本意な部分もあるかと思います。そこのところ考慮して読んで下さい。感謝。

おわりに

木工に関しても海外の日本の伝統技術に対する評価は高く、我々は自分達の文化にもっと誇りを持っても良いし、我々がやっていくことは多いという実感はあります。伝産協会 (通産省の外郭団体 : 伝統的工芸品産業振興協会) を始めとする官主導の従来からの国内の伝統工芸の保護という、大してインパクトのない活動と作業の蒸し返しを続けていることに歯痒さ苛立ち虚しさを感じています。

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