家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

はじめに

この通信も早五年目に入ります。最近は、「本業は通信を発行することだね」であるとか、「そのエネルギーを家具作りに向けたらいいんだろうけど」などと言われますが、なんとか続けられてきました。ネタ不足への不安はありますが、ある程度開き直ってやっております。また、読者によって内容への要望は異なりますが、耳は貸しません(少しは貸す。実は貸す余裕が少ないのです)。最近はアマチュアの方からのアクセスも多少あります。アマチュアの技術はもっと向上すべきであると思いますし、木工関連の裾野は質、量的に広がらなくてはなりません。結果的に家具作りへの理解が進まなければ我々をとりまく環境も活性化していきませんし、そのための情報の交換や、開かれた環境は必要なことだと考えます。家具にせよ建物にせよ、作りたい人は自分で容易に作れる環境が整わなければならないし、そこでプロの意義があると思います。そのあたりの状況を御理解頂き、今後とも情報の提供等、よろしくお願いします。

物に値段をつけるとき (2) 谷 進一郎

こうして色々な思いをめぐらしながらも無事納品できて代金をもらえるとほっとする。
ところで比較的単価の高い仕事が多いので俗に言うお金持ちばかりが顧客かと思われることがあるが、決してそうではなくて、こういう仕事が好きな人、理解してくれる人が顧客になるのである。普段の収入は決して多くなくても本物を使いたいと思う人は少なくなくて、一年がかりで貯金してくれたりする人もいてありがたいと思っている。
しかし仮に自分が注文する立場で経済状態などを考えると、一年かかってもなかなか二十万や三十万のものを作ってもらう余裕はない。ということは顧客についても、決してお金持ちではないといっても、やはりある線より以上の収入がないと買って使ってもらうことはできないことになる。その線を下げることができれば、より多くの人に使ってもらえる可能性が開けるのだが、それでもある線から以下の収入の人たちを切り捨ててしまっているような思いがしてしまう。ある限度以下には安くつくれないのだから、しかたがないことだと言われても、ついこだわってしまう。ものをつくって代金の請求をする時、たとえ正当な値段であっても相手の経済状態が自分より低ければ、値段が高いような、もっと安くしてあげられるような思いがぬぐい去れない。公定価格もないし、給料をもらうわけでもない我々としては、自分の裁量で値段を決められるわけで、それが良さでもあるかわりに、思いめぐらす原因になっている。

「季刊・無尽蔵」で価格の背景について様々な工人へのアンケートをしたことがある。材料費何% 人件費何 % と内訳を書いている人が多いが、自分の人件費はどういう基準で算出しているのだろう。内訳がどうあれ自分の労賃一日働いて一万円とするか二万円とするかで随分違う。仮に一万円とした場合、何故一万円でなければならないのだろうか。
ある人は月三十万円の収入が必要だからと言う。それで一日あたり一万円の労賃になると。個人営業の大工さんの労賃を参考にする人もいる。いずれにせよ自分の暮しを月収三十万円の暮しにするか、月収二十万円の暮しにするかによって違うだろう。月収三十万円の暮しは贅沢で、月収二十万円の暮しは慎ましいとは何を基準に言えるだろうか。
それに解答の中には値段にはデザイン料は加えていないという解答もあるが、実際にデザインをして時間と能力を費やしていながら加えていないというのは、どういう解釈なのかと思う。自分で算出する時は入れていないつもりでも作った品物の代金を収入として赤字もなく暮しがなりたっていることは、加えていないことにはならないのではないだろうか。物の値段を考えても結局はそれぞれの生活レベルの設定で単価もかわるのではないだろうか。
それから、どこまでを仕事と評価するのかである。工房の中で直接その品物を加工したり組立たりしている時間だけを仕事とするのか、受注の打ち合せや納品を自分でやっていればその時間はどうするのか。あるいは工房を維持するための雑費はどう考えるのか、はたまた一人の注文を得るために、百人の人と話している時間はどう計算したら良いのであろうか。
そういった仕事の評価も、仕事をつらいと思い、営業が面倒に思えたりすれば、つらい思いをした代価として金をもらって当り前と割り切れるが、仕事が楽しかったり、人と楽しく話しているうちに注文をもらったりすると、楽しんだうえにもうけて良いのだろうかと思ってしまうこともある。
それについて、世の中多くの仕事はつらいのが当然といわれているが、仕事が楽しくたっていいじゃないか。仕事が楽しいうえにもうかれば最高じゃないか。もっと胸を張ってもうけたらいいと言う人もいる。さらには高過ぎるのではないか、などとくよくよせず、売れればいくら高くてもいいじゃないかと言い切る人もいる。色々と気をつかわずに良い物づくりに専念することだと言われる。しかし我々のつくるものは実用品なのであって、値段のあってないような実用品は実用品とならず、値段を考えない物づくりは、作家か趣味でつくる人にまかせるほかないのである。

Contents
Sales & Service

椅子用ペーパーコード
デンマーク製ペーパーコードを販売しています。

桐油の販売
オイル仕上げ用の「桐油」を販売しています。

椅子の張替え
Yチェア等の椅子の張替を行っています。

ウィンザーチェア教室
英国スタイルの本格ウィンザーチェア制作教室を開催しています。

Link

興味の壺
プロダクトデザイン・メカニスム・伝統的アーキテクチャー等を紹介しています。