家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

おわりに (天然酵母パンについて)

先月号の「おわりに」の続きです。天然酵母パンについてひとこと。手元に十数年前の朝日新聞のスクラップがあります。「天然酵母パン 静かな人気」というタイトルです。東京町田の星野さんについての記事です。

最近では数多くの「天然酵母」と表示されたパンが売られるようになりましたが、素朴な疑問として、従来からのイーストは天然酵母ではないか?、ということがあります。もちろん従来からのイーストだって由緒正しき天然酵母です。市販のイーストは、自然の中から活性の強い酵母を選び、イーストフードと呼ばれる、植物でいえば化学肥料のような酵母のエサを与え、工場で大量に培養されたものだそうです。それに対し、星野さん個人が自然の中から選び、培養し安定化させたイーストが「星野酵母」あるいはただ単に 「天然酵母」と呼ばれているものです。量産パン工場などでは速やかな発酵が重要で、それに適した活性の強い酵母が必要です。星野さんは、一般のイーストフードを用いず、穀類を餌(培養基)に酵母を培養し、しかも十種類位の酵母をブレンドし、風味や香りを追及したものを作り上げたのです。

昔からヨーロッパでは、果実の皮や木の葉から自分で培養した酵母を用いてパンを焼いており、自慢のパン種は代々受け継がれていました。以前、星野さんの近所にも自家酵母のパン屋があったそうですが、パンの出来が気温や湿度に左右されるという弱点が、その店のおやじさんの悩みでした。星野さんはもっと安定した、雑菌に強い酵母を作ろうと考え、時間をかけて酵母を選別、商品化したわけです。
誰がいい始めたのか天然酵母という表現は間違っています。元々天然の酵母に対し、どうして天然と付けなければならないのでしょう。天然酵母ではなく、強いて言えば「天然培養基使用酵母パン」「有機培養基酵母パン」「自家培養酵母パン」などという所だと思いますが、そのあたりは全く振り返られることなくまかり通っているというのが不思議です。

次にいわゆる天然酵母パンに関する疑問として、天然酵母だから旨い、安心という風潮は何なのだろうと申し上げたいのです。ここでも曖昧な「天然酵母」が、イメージだけ一人歩きをしていると感じます。僕は星野さんの熱意を評価、尊敬するものでありますが、どこへいっても星野さんの酵母を買い込み、「天然酵母だから旨いですよ」といって売る方も売る方、乗せられて買う方も買う方ですが、僕が言いたいのは、自然界の中でものすごい数が存在する酵母の中から、星野さんが彼の感性でブレンドした「唯一星野天然酵母」(注:「ホシノ酵母」の中でも実際は三種類あるそうです)を用いて「天然酵母パン」とするのであれば、天然酵母パンの評価自体がすでに評価以前の曖昧なものにすぎないと考えます(イーストから差異化する天然酵母ではなく、全てを天然酵母と定義すれば話はまた別ですが。この言い方も実は変)。
天然酵母を売りにする「手作りパン屋」なら、今ではメジャーとなった「星野天然酵母」ではなく、自分でそこらの果実の皮や木の葉から培養した 「自家培養天然酵母」 を用いて消費者の評価を仰ぐ気概を出してもらいたいものであります(最近はちらほらあるみたいですが)。酵母自体を商品化するのでなければ安定度合いは低くていいわけですから、「ホシノ酵母」より美味な自家用のパン酵母を発見する可能性は十分あると思うのです。
ちなみに我家では、ビールを作ったあとのオリ(ビール酵母)を種にしてパンを作ったことがありますが、ほんのりビール風味で結構いけましたョ。

その朝日新聞の記事によりますと、「穀類ではなく化学物質をえさに培養する人工酵母(イースト) が第一次大戦末期、ドイツで開発された。云々…」とあります。この記事によると、イーストは人工のものであるという誤解を与えます。天然酵母と、ことさらにいわれ始めたのはまさかこの記事のせいではありますまいが…。

Contents
Sales & Service

椅子用ペーパーコード
デンマーク製ペーパーコードを販売しています。

桐油の販売
オイル仕上げ用の「桐油」を販売しています。

椅子の張替え
Yチェア等の椅子の張替を行っています。

ウィンザーチェア教室
英国スタイルの本格ウィンザーチェア制作教室を開催しています。

Link

興味の壺
プロダクトデザイン・メカニスム・伝統的アーキテクチャー等を紹介しています。