家具制作鯛工房

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オイルフィニッシュ用塗料の各構成要素について / オイル (油脂)

■オイル(油脂)

我国における塗装法のテキスト等において、オイル仕上げの種類として挙げられているものに、亜麻仁油仕上げ、ボイル油仕上げ、チークオイル仕上げなどがあります。使用するオイルの種類が異なっているだけで、仕上げの方法はどれも同じような記述がなされています。しかし、オイルの違いにより、何がどれだけ違うのかという点についてはあまり記述されていないし、解説もなされていません。オイルフィニッシュを見直していくにあたり、まずはその主要成分である、オイルとは何かということから考えていく必要があると思います。

オイル(油脂)とはきわめて種類が多く、定義としては常温において粘性を感じ、水に溶解せず、水よりも軽い物質をいいます。分類としては植物油脂と動物油脂に大別され、植物油は乾燥性の強弱により乾性油、半乾性油、不乾性油の三種類に分類することができます。また、乾燥性はヨウ素価(注1)の大小により判断することができます。

  • 不乾性油 : ヨウ素価100以下。(例)オリーブ油、椿油、ヒマシ油。
  • 半乾性油 : ヨウ素価100~130。(例)大豆油、ナタネ油、綿実油、サフラワー油。
  • 乾 性 油 : ヨウ素価130以上。(例)クルミ油、アマニ油、荏油、桐油。

オイルフィニッシュ用油脂として最も重要なものは乾性油です。乾性油とは、空気中に放っておくと自然に乾燥する油のことです。不乾性油とは、まったく乾燥しない油であり、半乾性油とは両者の中間の乾燥性を持つ油のことをいいます。乾性油の乾燥機構は、簡単に言って油の分子が空気中の酸素によって酸化され、大きな分子になることです。また、乾燥性の強さは、油の主成分の一つである脂肪酸が多くの不飽和基(二重結合)を持つことによるそうです。さらに、共役二重結合(二個の二重結合が隣合って存在するもの:主に桐油などに存在する)を持った乾性油は特に乾燥性が高くなります。乾性油中に含まれる主な不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などがあります。

(1) オレイン酸
一分子中に一個の二重結合を含みほとんど乾燥性はありません。ほとんど全ての油脂に存在します。液体植物油の多くのものはオイレン酸を20%以上含んでおり、椿油、オリーブ油の主要脂肪酸でもあります。

(2) リノール酸
一分子中に二個の二重結合を含み乾燥性はリノレン酸につぎます。半乾性油および乾性油の主成分をなしており、特にサフラワー油、荏油、大豆油、綿実油などに多量に含まれます。

(3) リノレン酸
一分子中に三個の二重結合を含み乾燥性は強い。主として乾性油、半乾性油に含まれ、特にアマニ油、荏油には多量に存在しています。

(4) エレオステアリン酸
一分子中の二重結合の数は三個ですが、その二重結合が三個隣合って存在する共役二重結合であるため非常に重合しやすく、乾燥性もきわめて高く、桐油中に主成分として含まれています。

(5) パウナリン酸 (高度不飽和酸)
二重結合四個、あるいはそれ以上有する不飽和酸は、一般に高度不飽和酸と呼ばれ、きわめて自動酸化を受けやすく、アカリットム脂、ホウセン花種子油の中に二重結合四個を有するパウナリン酸という特殊な共役高度不飽和酸が存在します。

注1)ヨウ素価
乾燥度のバロメーター。二重結合にヨウ素をかませてヨウ素を定量した値。これにより二重結合の量が分かる。この値が大きいほど乾燥性が高い。