家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

瞬間接着剤を用いた補修について

塗装作業に入る前までに、生地のキズ、割れ、虫穴、節穴等の補修を行なっておかなければなりません。なお、作業途中で生じた、打ち傷、へこみ傷は、水引きします。深い傷はたっぷりと水を付け、アイロンを当てれば結構戻ります。
補修にもさまざまな方法があるかと思いますが、今回は瞬間接着剤を用いた方法を紹介します。瞬間接着剤の最大のメリットは、まさに極短時間に硬化(接着)が完了することです。それに加え、接着力が強いこと、充填に適するということがあります。以上の理由により、一度使い始めたら手放せないものです。

用意するもの

■瞬間接着剤

補修には金属用の低粘度タイプを使用します。さまざまな粘度の製品が市販されていますが、ホームセンターなどで購入する場合は、「金属用の低粘度タイプ」を選択して下さい。木工用の高粘度タイプは充填性が悪いので、補修用というよりも、接着用と考えておいた方が良いかと思います。特に、留め・木口などの接着は中、高粘度品が使いやすいと思います。片面に瞬間を塗布し、片面にプライマーを塗っておくというような使い方をすると木口でもすみやかに接合できます。

瞬間用の溶剤はアセトンを用います。マニュキア徐光液でも代用できます。誤って指などを接着してしまったときのために用意しておくほうが良いでしょう。

■瞬間接着剤用プライマー

瞬間接着剤用プライマースプレータイプと瞬間接着剤 瞬間接着剤用プライマーは必ず用意して下さい。これは、瞬間接着剤用の硬化促進剤です。瞬間接着剤(シアノアクリレート系接着剤)は空気中の水分と反応して硬化します。しかし、充填した場合はなかなか硬化するものではありませんし、接着不良を起こして外れた場合などは再接着が難しいものですが、そのような場合、プライマーで前処理をしておきますと速やかに硬化、接着します。また、白化も起きにくくなります。基本的に前処理は、事前に接着する片面にプライマーを塗っておくだけです。先にプライマーを塗り、接着が早過ぎて困る場合などは後でプライマーを接着部分に滴下します。プライマー無しでは、瞬間接着剤は使えないと言ってもいいと思います。

プライマーにはリキッドタイプとスプレータイプ (写真右) の二通りがあります。私は、補修をする場合、瞬間接着剤を滴下した後にプライマーを滴下するという方法を取っています。そのようなプライマー処理の場合、スプレータイプの方が、使い勝手は格段に良いかと思います。少量のスプレーでゆっくり硬化し、多めに塗布しますと急激に硬化します。塗布量の調整がしやすいのでスプレー式が便利と思います。多すぎますと沸騰するように反応するので注意が必要です。

リキッドタイプの使用法は、ある程度広い面積の接着の場合に、事前に刷毛で片面に塗っておくというような使い方をします。補修にリキッドタイプを用いる場合は注射器を用いて滴下します。少量を局部的に滴下できるからです。この場合、注射針の先端は危なくないようカットしておきます。

■木粉

サンディング作業で生じた削り粉を集めて、保管しておきます。明るい色から濃い色の木粉まで最低2種類、さらに、小麦粉(ホワイトとして色調整に使用)も用意しておきます。いろんな色の木粉を用意しておくのは、充填する場所によって色合わせをするためです。

■切落し材

家具木工品を製作している間は、木取り材の残り、切り落とし材は捨てないで保管しておきます。何かのトラブルが生じた場合、切り落とし材から同じような部分を探してきて補修に用います。色や木目の似かよった材を用いることにより、補修跡を目立たせなくするためです。

さまざまな補修作業

■割れ

どうしても取り切れず、木口に残った割れで、隠れてしまう場合は、材を垂直にして瞬間接着剤を充填します。その部分に後加工がある場合、内部の硬化は時間がかかりますので、十分に時間を置いて下さい。その場合、脇の木端面から、接着剤が滲み出す場合がありますので注意のこと。知らずに手を接着してしまう場合があります。大事な部分はプライマーをかけ過ぎて、沸騰させないよう注意します。
木口に割れが入ってしまったり、割れの一部が残ってしまったりした場合で、その部分が外観面や目立つ場所の場合、保管してある材の中から似かよった年輪のものを選んで埋めます。導管は千枚通しのようなもので穴を開け、色合わせをした木粉を入れて、瞬間で固定します。射出線も根気良く再現します。ケースにもよりますが、時間を掛ければ分からなるようにすることは可能です。この場合、最後に木口面全体に瞬間を塗布して条件を同じにし、瞬間の補修跡を分からなくします。
木端面の割れの場合は、マスキングをきちんとしておくか、瞬間接着剤を滴下したあとすぐにウエスで、み出た瞬間を拭き取ります。導管の深い、タモやオークの場合、導管に入った瞬間接着剤が目立ちますので、導管にはみ出さないように注意します。ラッカーやウレタン仕上の場合は目立ちません。

■節穴

節穴等の補修はブラックウォールナット等の濃い色の木粉を充填し、瞬間接着剤を滴下します。瞬間接着剤はアクリル系のため、充填部分だけプラスチック感が残ります。節穴だけならまだしも、導管の深い材の場合は立ちますので、はみ出さないように注意します

■虫穴

まず第一に、前述のようにケースによっては、防虫剤を注入しておきます(できればあまり使いたくないものです)。次に、V字型の彫刻刀で虫穴を含む部分を木目に沿って縦に長く切り取ります。裏側が見えないような、例えば鏡板などのパーツは、裏側の同じ部分から、同じようにV字型に切り取とって表のV溝部分に移植し、押さえつけながら瞬間とプライマーで固定します。反対側も見えるパーツの場合は、切り落とし材の似たような部分を用います。

その他

自動鉋を通した後、節の回りが場所によって深い逆目になり、それが例えば胴付き部の場合、鉋で逆目を取るまで削れません。また、面取りカッターで致命的な深い逆目が生じたときなども、瞬間+木粉+プライマーで速やかに解決できます。瞬間を滴下すると木粉は最初の色よりかなり濃くなりますので、小麦粉などで調整します。