家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

材の伸縮と使用法 (1)

木製品を製作する場合には、木材が将来どの方向に伸縮するのかということを予想して木材をの配置を考えなくてはなりません。この点について解説していきます。

■材の伸縮を考慮するとは

家具や木製品製作においては、木材の伸縮を考慮して材料の使い方を考えなくてはなければなりませんが、この点に関しては日本の家具・木工のテキストには記述されていない部分が多く、間違いだと思われる部分もかなりあります。非常に重要な事柄ですので、最初に正しく認識しておかなければなりません。

家具作りにおける材の用い方を見直すことになった事例の一つです。ある展示会場に出品した箱物に予想以上に狂いが発生したことがありました。家具にとっては非常に厳しい環境ではありましたが、そのときの材料は元々が厚い板で、薄くするのに忍びなく、帆立 等も、通常より厚く仕上げた品物でした。また、材料の含水率もかなり高かったのではないかと思います。しかし、それが故障につながるようでは論外です。
改めて初心に帰り、材の伸縮と、それを考慮した材の用い方を見直そうと考えたわけです。

木工所時代、我々は元の材を不必要に薄くすることは厳しく戒められていましたから、その習慣が身についているということもありました。一枚二枚ならともかく、多量の抽斗の側板の厚さを揃える場合など、もちろん機械を用いますが、できるだけ厚く仕上げるということが一つの腕のみせどころだったのです。
抽斗の材料などは、元々が厚い板を用いるわけではなく、量が多い場合、かなり反った材料も含まれてくるため、全てを厚く仕上げるというのは慣れないと結構難しいわけです。

修業をしてきた家具屋時代、親方が口癖のように言っていたことは、特に、框材は薄く、狭くしなければいけないということです。そうすることにより、木材の伸縮量を抑え、その影響を最小限にとどめることになり、結果として故障の発生を抑えることができるということです。以下、事例です。

仕口としては二重柄や二枚柄を多用するということがあります。
これは乾燥につれて材が収縮していくほど、相手の材を締ていきます。その結果、接合部が離れる(切れる)のを防ぐことになります。さらに、鏡板も必要以上に厚くしないということ、建具の場合、鏡板が広く厚いと、鏡板にねじれが発生した場合、框で押えきれないからです。

木取り前や荒木取り後などに、材料が反っている向きをチェックしておき、場所によっては反りの向きを考えた使い方をするという点の徹底です。
例を上げると、両開きの扉です。中央の合わせ部分の左右の縦框は、両方とも外に向かって凸になるよう配置します。左右が凹凸になるような配置は避けなければなりません。将来さらに反りが進む可能性があり、それに対処するためであり、そうすることにより、反りが目立たないからです。

イラスト:木材の収縮 荒木取りの後は材をしばらく置いて、応力を抜かせる(反らせてしまう) ということも大事でしょう。その後、最終寸法に決めるわけです。さらに、含水率管理、柾目板、動きの少ない材料などを用いることによっても故障を起こしにくくすることも可能です。
加えて大切なことは、木材の伸縮を考慮して材を用いるということです。この点について非常に参考になったのは、海外の家具木工のテキストでした。

中学校の技術・家庭科の教科書や職業訓練校の木工のテキストには、木材の収縮を示すイラスト(図1)がよく掲載されています。そして、我々は木材というものは心材よりも辺材、ノルマル方向(中心方向)よりもタンジェント方向(円周方向)のほうが収縮率は大きいということを学びます。
しかし、ただそれだけで終わりです。木材固有の特性を、どれだけ有効に実際のモノ作りにつなげていくかということについては、残念なことに学ぶ機会はありません。実は木材の特性を知り、次の段階でそれをどのように生かしていくかということが大切なのです。

イラスト:木材の収縮を考慮した加工 Nick Engler 氏は自著「Joining Wood」の中の、箱や抽斗(ひきだし)の材の使い方で、木裏を表に用いるのが良いというように書いています。イラストを見るとその理屈がよく分ります(図2)。つまり、木表を表側へ持ってくると、収縮量の大きい木表側は外側へ反り、故障の原因となるわけです。中学校や職業訓練校のテキストの木材の収縮のイラスト(図1)は、実際の加工に関し、(図2)のような材の用い方をする必要があるという所に結びついていかなければならないはずです。しかし、この事柄が、我国の木工のテキストに明確ではありません。加工技術以前に大切なことなのですが…。

(図2)において、小箱はともかく抽斗の場合ですが、私は修業時代に親方から側板が膨らむと本体と触ってトラブルの原因になるので、側板は内部に向かって凹むように、つまり、木表を表になるように使うものだと教えられていました。そうすることにより、故障は減り、よく目にする引出し内部に白太はこないし、見栄えもいいのだというわけです。

■板の矧ぎ(板どうしの接着)

イラスト:柾目板と板目板の接着の問題点 接着の基本は、接着剤の接着性能以前に木材の含水率管理と材の伸縮方向の把握にあります。つまり、高い含水率の木材を接着すると、乾燥によって木材は収縮し、接着層もそれに伴ってストレスを受けます。このことが将来において接着が切れる等の故障につながります。高性能な接着剤をあてにする前に注意することがらです。
例えば、柾目板と板目板を接着すると、接着面におけるそれぞれの材料の収縮率ははなはだ違いますので、矧ぎが切れるという故障の発生率は高くなりますし、さらに、それが高い含水率の材料であれば尚更その傾向は強くなります(図3)。

イラスト:柾目板同士の板矧ぎ Tage Frid 氏は、米国タウントンプレス社の書籍の彼自身による「テキストの間違い」という記事の中で、柾目板の場合の板矧ぎの方法について、心材と辺材では収縮率が違うので、甲板などの板矧ぎの場合には心材は心材、辺材は辺材どうしで接合するように、それでなければ目違いが出るということを述べています(図4)。まさしく、目違いが生じるということは、接着層にストレスを生じ、そこから矧ぎが切れる可能性が高いわけです。柾目材だからといって無頓着な使用法は危険です。

イラスト:甲板の矧ぎ 次に、板目板の板矧ぎの方法についてですが、木表と木裏を交互に矧いでいく方法は良くないと明言しています。そのような矧ぎ方ではウォシュボードのように波打つし、特にテーブルトップなどの場合、それを押え込むのにたくさんの木ネジが必要です。それに比べ、全て、木裏を表にすると全体が大きく円弧状に反るため、その必要はないし、色はよく、シラタ、節は少なく、より合理的ということです(図5)。

今だに木裏、木表を交互に接着していくのが正しいとするテキストの記述や、そう思いこんでいる方がいますが、これははっきりいって間違いだと思いますし、大工さんなどは何時の場合も木表を表にする使い方一辺倒です。困ったものだと思います。
私が師事した親方も節や汚れなどの場合は仕方ありませんが、やはり、基本的には全て、木裏を表にもってくる方法をとっておりましたし、私もそう教えられてきました。

「DER MOBEL BAU」というドイツの家具作りのテキストは非常に参考になる一冊です。心材と辺材の収縮率の違いについても相当に詳しく解説してあり、その中で、板矧ぎについての留意点ですが、もちろん柾目板を用いるのが最もいいということですが、板目板の場合、テーブルトップ(甲板)や家具の扉の鏡板などは、木裏を全て表にもってきますが、建物のドアなどは両面が同じ条件の方が良いので、その場合は木裏、木表と交互に矧いでいくという記述をしています。

イラスト:年輪の傾斜の問題 さらに、甲板などで、板目材を接着する場合ですが、同じように木裏を表、辺材どうしを接着するにせよ、木口方向から見た場合、年輪の傾斜の違いが甚だしい場合は、やはり収縮量が大きく、目違いがでやすいわけですから避けられれば避けたほうが賢明でしょう(図6)。

細かい部分での木材の収縮、またそれを考慮した材の用い方は解っているようで結構見落している部分が多いものです。また、このように使った方が良いと分っていても、傷、色、節などがあったりして必ずしもそのように使えないことも多々あります。しかし、収縮に関する木の性質をきちんと認識して作業を進めることは、そうでない場合と比べ、結果に大きな開きが出てくるのは明らかです。

最後に甲板など広い板を得る目的で板の接着を行なう場合の留意事項をランダムに挙げてみます。全ての項目を満足させることはおそらく不可能です。そのときの優先順位とバランスで決定していくしかありません。

  1. 木裏を表に。
  2. 材料どうしの色、木目を合わせる。
  3. 傷、節、色の悪さなどがある面は裏に。
  4. 両端に配置した材料の木端面が綺麗であるか。
  5. 鉋削りのため、順目方向を合わせる。
  6. 木口から見た場合、木口の年輪の傾斜角を合わせる。
  7. 木表を表側にもってくる場合は、反り返りを防ぐため端に配置しない。
  8. 幅の狭い材料は一番端に持ってこない。かといって中央がベストではなく、全体の色・柄のバランスを考慮して配置することが大切。

■鏡板の矧ぎ

次に関連事項ですので鏡板の矧ぎについて述べていきます。
鏡板は扉など、目立つ部分に使われたりしますので、木目の流れや全体の色調などに注意して木取ります。

イラスト:鏡板の矧ぎ 複数の板材を用いて接着していく場合は、これまで述べてきた注意事項を考慮しますが、重要で目立つ部分の鏡板は、一枚の板から木取ります(図7)。いずれの場合も心材同士、辺材同士を合わせます。(図7左)は、木目の柄(木目の傾斜) も合うことになり、矧ぎの目立たない、違和感のない鏡板を得ることができます。
(図8)は定番の矧ぎ方です。厚板をわいてブックマッチで用います。鏡板の場合は框材で四方を固定されているため、木裏、木表というふうに矧いでも特別問題はないと考えます。
(図9)は帆立幅や建具幅が狭い場合から、だんだん広くなる場合の例です。

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