家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

含水率計 エレクトロフィジックス CT-33

カナダのエレクトロフィジックス社製CT-33という含水率計を購入しました。いまさら私が言うまでもありませんが、材の含水率管理は非常に大切なことがらです。どんなにきちんとした仕口や加工を行なっても、材の含水率管理がずさんだと故障が発生するということはよくあります。今回、個人輸入により含水率計を購入しましたので、その経過と結果を紹介します。また、購入に際しては以下のような基準で選定しました。

  1. 含水率計には抵抗式と(注1)、高周波式(注2)がありますが、接触するだけで済み、計測範囲の広い高周波式に。
  2. できることならアナログメータータイプに。ただし、これは単なる好み。
  3. 信頼感がありそうな製品。ただし、この点につきましては個人輸入のため、事前に現物を手にできるわけではなく、よく分からないというのが率直なところです。(FWW誌No.105にモイスチャー メーターのテスト記事が載っています)
  4. 求めやすい価格。

最初にワグナー社製L609という製品が値段も安いし良さそうだと考え、ワグナー社にオーダーしたのですが、後日ワグナーからファックスが入り、それには、L609は、主にホビイスト用であり、プロフェッショナル・ユースとしては機能的に少し劣ります。プロユースとしては他にL606とL601-3の二機種を用意してあるので、そちらのほうがいいのではないか。というメッセージが載せられていました。
L606はファイン ウッドワーキング マガジン誌(FWW誌)でもたまに宣伝が出ています。FWW誌No.105のテストでも、JOHN SILLICK氏は、ピンレスタイプでありながら手頃な価格。豊富な樹種への対応(補正表)付き(注3)。コンパクトで使いやすい等の理由でL606を支持しています。

再検討し、結局カナダ、エレクトロフィジックスのCT-33を購入することに決めました。信頼感に関してはワグナーL606のほうがありそうでしたが、価格と性能、後はカナダから購入するのは初めてということで、好奇心とフロンティア精神?、で決定しました。ワグナーの親切(?)には申し訳ありませんでしたが、キャンセルのファックスを送った次第です。

機種 計測深度
(mm)
計測範囲
(%)
サイズ
(mm)
実売価格
($us)
カタログ価格
($us)
ワグナー l609 13 5~22 114×70×25 129.00 * 225.00
ワグナー l606 19 5~30 114×70×38 229.95 * 260.00
ワグナー l601  - 5~30 190×102×76  - 575.00
エレクトロフィジックス ct12 20 4~24  - 110.00  ←
エレクトロフィジックス ct33 25 0~30 114×84×38 166.00  ←
エレクトロフィジックス ct1000 38 0~40 178×76×64 198.00  ←

[ * については雑誌やカタログなどにリストされていた価格です]

エレクトロフィジックス CT33 製品は思った以上にシンプルでした。カタログからの印象では、かなりちゃちな感じでしたが、実物は印象ほどでもありません。しかし、いかにも手作りという感じは多少あります。特にセンサー部分(センサープレート)はFRP製の回路用プリント基板を利用しており、それが本体裏面にビス(真鍮製マイナスネジ)止められています。基板表面の銅板部は内側に向けられていますので傷むということはありませんが、ちゃちだと感じる方もいるかもしれません。この部分はもっとも手作り感がに滲んでいるところです。僕はコストダウンの巧い方法であると解釈しています。また、ソフトケース等は付属していません。

エレクトロフィジックス CT33 裏面 その他で気付いた点としては、スイッチを入れた後のメーターのゼロ調整に多少時間がかかりました。振れ過ぎている場合、戻すと次の日に戻り過ぎているのです。何度か調整するとゼロになります。しかし、湿度や気温によってもゼロは多少ずれますので、気にするときりがありません。これは、メーターの物理的なゼロ調整とは別の調整で、電源を入れ、材に接触させる前のゼロ調整です。
また、計測深度は25mm ですが、サンプリングがこれよりも薄い材だと実際の含水率と違ってきますので、正確な値を得るには補正する必要があります。ワグナーL606は19mm ですが、使いやすさと精度のバランスを考えた場合、やたらに深ければいいというものではありませんので、そのへんの考慮があったのかなとも思っています。深すぎると、薄い板の場合かえって不便です。
現物がありませんのでワグナーL606との比較はできませんが、私はエレクトロフィジックスCT-33に満足しております。

価格ですが、本体がカナダドルで$199、送料(航空便:保険無)が$25、当時の対カナダドルレートは1CAN$ = ¥78.4でしたので、合計¥17,562でした。
含水率といっても、私はあくまで目安と考えています。計る場所で値は刻々変化します。だから補正用のボリュームやスイッチが付いたようなモデルは高価になるだけで特に必要ないと思っています。例えば、寝かしてあった材の含水率を計る、高すぎる場合は自作ドライキルン等に入れ、除湿機や乾燥機で乾かしながら計測し、必要な含水率まで下げていく。というような使い方の場合はかなり有効だと思うわけです。

注1)抵抗式含水率計
レジスタンス・メーター、ピンタイプ・メーターとも呼ばれたりしています。木材の直流抵抗は含水率によって変化するのを利用したもので、10~20mm 程度の針を突き刺して計ります。比重の補正は必要ありませんが、電極間のみの計測となり、平均的な含水率を求めにくいという弱点があります。

注2) 高周波式含水率計
EMF(エレクトロマグネチック・フィールド:電磁場)タイプメーター、ピンレスメーターとも呼ばれたりしています。高周波容量(キャパシタンス)、高周波抵抗(インピーダンス)、パワーロスなどを測定する方法があり、どれかの方式か、それらの組合わせで測定するそうですが、私はきちんと把握していません。比重補正の必要がありますが、「センサー部分の面積×深さ」の立方体の平均の含水率が測定できるというメリットがあります。

注3) 補正表
私はハイクォリティな高周波式含水率計のシステムを知りませんので、エレクトロフィジックスCT-33の場合で述べたいと思います。高周波式は木材の樹種や比重によって値が異なりますから、比重の違いを補正する必要があります。CT-33は比重0.5の木材を基準にしており、それ以外の樹種は補正表を用いて補正しなければなりません。どれだけ多くの樹木の比重が収録されているかということも使い勝手にとっては大事な点です。(CT-33の場合二百種類)また、温度と厚み (規定より薄い場合)に対する補正量も表示してあります。

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