Technics for Furniture Making
健康対策家具について
数年前から日本では、「健康家具」「健康対策家具」というものが流行している。
きっかけとなったものは、新築住宅の場合、建材に含まれている化学物質が人体に悪影響を与え、体調を壊す現象である。最近社会問題となっているものである。
これは「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」と呼ばれている。近年の住宅の機密性が高まったための影響と言われている。
これらの化学物質は合板、接着剤、絨毯、ビニールクロス、畳、防虫、防蟻剤など広範囲に使用されており、どの物質がどの症状を引き起こしているかという因果関係は、まだ医学的に十分解明できていない。
| 影響 |
物質名 |
発症状況と症状 |
| 急性中毒 |
ホルムアルデヒド・有機溶剤・殺虫剤 等 |
塗装時など濃度が高いときに発生。目やのどの痛み、呼吸艱難、めまい、頭痛、吐き気 等 |
| 感作性 |
ホルムアルデヒド・殺虫剤 等 |
人により微量でも影響がある。アレルギー、アトピー 等 |
| シックハウス症候群化学物質過敏症 |
ホルムアルデヒドVOC・可塑剤・殺虫剤 等 |
人により異なり、極微量でも影響する。自律神経異常、肩こり、頭痛、吐き気等多様。 |
| 臭気の影響 |
ホルムアルデヒド・有機溶剤 等 |
物質によって臭気が感知されるレベルが大きく異なる。 |
日本では、1996年7月、学識経験者、関連業界、関係省庁(建設省、通産省、厚生省、林野省)からなる「健康住宅研究会」が設置され、室内における健康・安全環境の問題解決のための方法が検討され、「室内空気汚染の低減のための設計・施工ガイドライン」「室内空気汚染の低減のためのユーザーズ・マニュアル」をまとめ、1998年4月に公表した。
「健康住宅研究会」では、291の有害な揮発性有機化合物の中から、特に6つの物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、可塑剤、木材防腐剤、防蟻剤)を、健康障害を招く可能性が高い物質と指摘した。
さらに、2000年6月からは、残された課題のうち、特に緊急性・重要性の高いと考えられるテーマについて、集中的に調査検討を進めることを目的にし、「室内空気対策研究会」を設置し、活動を続けている。
■ホルムアルデヒドについて
ホルムアルデヒドは、接着剤(尿素樹脂)や塗料(アミノアルキド樹脂)をつくるために必要な化学物質である。しかし、毒性が高く、健康への影響が大きく、問題となっている物質である。
ホルムアルデヒドに接した場合、次のような症状が現れると言われている。
| 濃度 |
症状 |
| 0.05ppm |
臭気を感じる |
| 1〜2ppm |
不快感を感じる |
| 5〜10ppm |
目、鼻、ノドに強い刺激を感じる 耐えられる限度 |
| 10〜20ppm |
涙、咳が出る、強い呼吸が困難になる |
「社団法人 住宅生産団体連合会」は、「健康住宅研究会」で取り上げられた優先取組物質の放散量の低減と厚生省の室内濃度指針値を、出来る限り早期に達成できるよう、その対策を指針としてまとめ、2001年10月着工分から実施することにした。
収納・収納家具・建具類・造作材等及び住宅設備機器に用いる合板類についてのホルムアルデヒドの放散量基準は、日本農林規格(JAS)で定めるFc0等級レベル以下。MDF、パーティクルボードの場合は、日本工業規格(JIS)で定めるE0等級レベル以下とする。
Japan Agricultural Standard
(合板類についてホルムアルデヒドの放散量に関する規格) |
| 表示の区分 |
ホルムアルデヒド放出量* |
| 平均値 |
最大値 |
|
| Fc0 |
≦ 0.5mg/L |
≦ 0.7mg/L |
|
| Fc1 |
≦ 1.5mg/L |
≦ 2.1mg/L |
|
| Fc2 |
≦ 5.0mg/L |
≦ 7.0mg/L |
集成材・構造用集成材を除く他の合板類 |
| Fc2s |
≦3.0mg/L |
≦ 4.2mg/L |
集成材・構造用集成材 |
| Japan Industrial Standard |
| 種類 |
記号 |
ホルムアルデヒド放出量* |
| E0 Type |
E0 |
0.5mg/L以下 |
| E1 Type |
E1 |
1.5mg/L以下 |
| E2 Type |
E2 |
5.0mg/L以下 |
現在、住宅環境に関しては安全で健康的な住い作りに大きな関心が寄せられており、化学物質の使用を抑え、化学物質をなるべく使わず、天然素材を使った建築材料、木材の多用など、自然素材を志向する消費者が増加し、住宅メーカーでも、子供と老人部屋には、仕上げに自然塗料を指定するといったケースが増えている。
また、最近の自然回帰といったライフスタイルの傾向という相乗効果で、自然志向というものは一つのトレンドを形成しており、家具メーカーや合板、塗料メーカーでも無視できない流れとなっている。
各家具メーカーでも健康障害の原因となるノンホルマリンや低ホルマリンと呼ばれる、ホルムアルデヒドや VOC(Volatile Organic Compound)の発生の少ない材料を使用した製品を市場に投入し、この新しい流れへの対応を始めている。特に、この一〜二年の間で、大手家具メーカーの一部では、全製品を健康対策商品に切り替え、この流れに対応している。対応が遅れた場合、企業としての社会的な責任を問われかねないし、企業イメージのダウンに繋がるからである。
| 日本の大手家具メーカーにおける健康家具のホルムアルデヒド対策・仕様基準 |
| プライウッド |
JAS FC0タイプ以上の合板を使用 |
| MDF、パーティクルボード |
JIS E1タイプ以上の合板を使用 |
| 塗料 |
ホルムアルデヒドを含まないポリウレタン樹脂系の塗料を使用 |
| 接着剤 |
ホルムアルデヒドを含まない接着剤、または低ホルムアルデヒドの接着剤を使用 |
有名なメイルオーダー会社(カタログ名:Tuusinn-Seikatu)における、家具の安全基準は、
@ホルムアルデヒド:3.15mg/l 以下(FC2基準以下)。
A座に使用するファブリックは製造過程で塩素漂白をしない。塩ビ系合成繊維を用いない。
B繊維は遊離ホルムアルデヒド20ppm以下。
というものである。先ず、この安全基準をクリアーしなければ、同社との取引はできないという状況になっている。
■自然塗料(オイルフィニッシュ)について
従来は家具の表面に塗膜の存在しないオイルフィニッシュは汚れ易いということで量産家具にはほとんど利用されてこなかった。しかし、現在では、健康志向による理由から、各メーカーも子供用家具やテーブルセットなどに安全性の高い自然塗料を用いたオイルフィニッシュ製品をラインナップし始めている。また、都会で人気の高い小規模な家具メーカーなどは、そのほとんどがオイルフィニッシュ仕上げである。
「良品計画」でも、オイル仕上げの子供用学習机を売り始めた。
環境対応型塗料としては、T・Xフリーのウレタン、水性塗料がある。水性塗料は溶剤ベース塗料に比較して幾つかの健康破壊要素を減少させているが、問題点も多い。
そうした中、現在日本で注目を集めているのが「自然塗料」である。これは、石油化学製品をほとんど使用せず、天然油脂、天然樹脂、天然ワックスなどで構成された製品である。
天然溶剤でも健康問題を起こす、テレピン油、オレンジピールオイルは用いず、また、芳香族炭化水素 等の有機溶剤は中枢神経、造血組織に悪影響を与えるためにイソパラフィン、ホワイトスピリット、エチルアルコール等に置き換え、ビヒクルにはアレルギー反応を引き起こしやすい、アクリルレジン、イソシアネートレジン、エポキシレジン等を省き、リンシードオイル、カルナバワックス、ガゼイン、ウォールナットオイル、コーパル等を使用したものである。
特徴としては、どの自然塗料も浸透型で、木材に浸透して硬化するため表面にほとんど塗膜を生じない。そのため、木材の呼吸機能を妨げず、木材の質感を活かすことができる。もちろん、有害物質の発生はほとんど無い。
これは従来からのオイル仕上げ用塗料をさらに低公害型に改良したものと考えて良い。つまり、鉛などの有害なドライヤーを除き(ただしドライヤーは含まれる)、人体に影響の少ない溶剤を用いたものである。
最近の家具、インテリア関係の専門誌でも、自然塗料や自然素材に関する特集記事や施工例が多く紹介されており、関心の高さが伺える。一つのトレンドとして定着しているといって間違いない。
「自然塗料」仕上げは、従来型の塗料に比べ、乾燥が遅く、塗装終了まで長い時間がかかり、塗装ラインに乗せにくいという弱点がある。この弱点は量産家具メーカーの悩みでもある。また、製品表面にほとんど塗膜を生じないため、対汚染性などの性能が劣っているなどの問題がある。日本では、この点の認識は進んでいるが、製造、販売側は、この弱点を消費者によく理解してもらう必要がある。そのため、家具メーカーにとっては厄介な仕上げ方法だと言える。しかし、以下(表)のように欠点があっても消費者には受け入れられているのである。「自然や健康を害さない商品」という流れは止められないだろう。
| 自然塗料と一般塗料の相違点 |
| 区分 |
自然塗料 |
一般塗料 |
| 長所 |
-
オイルベースのため、塗膜面から有害ガスの発生が少ない。従って室内環境を害さない。
-
塗装後もムク材の呼吸力が大きい。
- ソリッド材の素材感を活かす。
- 塗装作業者の健康を損ねない。
- 環境負荷が小さい。
|
- 塗膜の耐久性に優れる。
- 乾燥が早い。
- 工業塗装のラインに適する。
- トータルコストが割安。
|
| 短所 |
- 乾燥時間が長い。(約24時間)
- 塗膜の耐久性が劣る。
- トータルコストが割高。
- 日頃の手入れが必要。
- 長くオイルの臭いが残るものもある。
|
- ムク材の素材感を殺す。
- 塗膜面から有害ガスが出やすい。
|
最近の日本の家具におけるキーポイントは、健康志向、ユニバーサルデザインが上げられる。現在、健康対応家具、及び、自然塗料仕上げ家具の出荷割合等のはっきりとしたデーターは無い。しかし、健康への対応製品への関心は高く、この流れに対応すること、対応への準備を行うことは必要である。特に、ホルマリン対策を行っていない家具は将来販売できなくなる可能性が高い。
自然塗料に関しては、現在法的には定義されてなく、基準が曖昧である。法律的な定義の明確化は急がれる所である。
(2001/09)
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