家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

形にまとめる − 発想力

形にまとめる能力として大きく、「発想力」「バランスをとる能力」 の二つがあるのではないかと思います。両方とも非常に大切です。まず、「発想力」(発想法)について私なりに述べてみたいと思います。

■資料収集

デザインの発想を行うことにおいて、豊富なアイデアの「タネ」が用意されなくてはなりません。その第一歩は資料の収集です。雑誌、書籍、カタログ、ウェブサイト、ショップ、ミュージアム、等々です。現在はデジタルカメラがありますので資料の収集には効果的です。また、常日頃から関心のあるものについて書物を購入したり、展示会に行ったりして、自分自身のセンスを高める努力を惜しまないことです。様々な「ネタ」が沢山のポケットに用意されていることにより、様々な発想に繋がっていく機会が増えるのです。

私は以前、お寺や神社に行く機会があるごとに、この建築様式を家具に利用できないだろうかと考え始めたのです。その後、本格的に日本の建築などを発想の原点に据えた家具を作ろうと思った後、多くのお寺や神社に行き、その建物やディテールを観察したものです。特に、神魂神社、出雲大社、伊勢神宮は写真では感じられないものが伝わってきました。歴史の重みでしょうか。
また、最初の頃は日本の洋家具のデザインを自分なりに再解釈しようとしていましたから、古い洋館や明治村などにも行きました。古い西洋建築のディテールは非常に勉強になります。

なお、現場に赴いて現物を観察する場合、大切な事は、単なる写真撮影だけではだめだということです。その場でスケッチを取ります。これが大切です。そうでなければ自分のものにはなりません。名作椅子のエキシビションでも可能な場合はスケッチを取ることです。スケッチと写真があれば万全です。

せっかく入手した資料ですが、後で探すのに時間がかかったり、何ページにあったのか分からなくなったりするものです。雑誌やカタログ等の情報は必要ページをスキャナーでパソコンに取り込み、デジタル化してデータベース化しておくと後々楽だと思います。

■要素分解

集めた資料をもとに、ある程度集中的に数多くのスケッチを書いていくわけです。ある期間、そのテーマに意識を集中させる必要があると思います。そこで「発想」が必要になってくるのですが、ただ漠然と「発想」を考えても、形にはなりません。
例えば、テーブルの新しいアイデアを求めている場合、最初に行うことは、テーブルに関して機能、構造等、求められる機能を書き出してみるわけです。これを要素分解、あるいは機能分解といいます。オーダーの場合は、前項の「デザインの前提条件」を考慮するとは当然です。

まったくのオリジナルとオーダーの場合と多少異なってきますが、一般的なテーブルを例として要素をリストアップしてみますと、以下のようになります。しかし、このリストアップでさえ個人によって違ってきます。この時点ですでに自己限定の危機があるわけです。

  1. 甲板の形状 : 丸・楕円・四角・耳付き
  2. 脚の形状 : トレッスル(丸・角)・四本脚(丸脚・角脚)・パネル状
  3. 甲板の機構 : エクステンション・ドロップリーフ 等
  4. 甲板の固定方法 : 駒止め・吸い付桟・金具
  5. 甲板のサイズ
  6. 脚の固定方法 : 木組み・金具
  7. 他の材料の使用・組み合わせ
  8. 使用される全ての部品のチェック

以下追加事項として、その他の条件 等。

  1. 競合商品の参照、機能分解
  2. デザインの前提条件(前項から)

甲板や足の配置によってイメージは大きく変わってきます。また、使用する金具によって足の取り付け方法などは変化します。場合によっては金具から考える必要があります。金具を考える場合、どのような加工方法が在り、コストとの兼ね合いはどうなっているのか等も調べなければなりません。また、金具の取り付けボルトの種類も考慮すべきです。その場合、どのようなネジ・ボルト類があるのかも調べておく必要があります。ネジ・ボルトに関して、無頓着な方が多いのには驚きます。無骨なユニクロメッキ六角ボルトがせっかくの製品を台無しにする場合もありますし、意味なく六角穴付きボルトを使っているケースもあります。ボルトを沈めない場合は、六角穴付きボタン(半丸)ボルトに変えるだけで出っ張りが減り、安全なんですが・・・。

使用される全ての部品のチェックは大切です。日頃見過ごしている部品の意味を再度考えます。使用する、ネジ・ボルトから再考してみる必要があります。脚、幕板、コマ等、同様です。この作業により、新たな着想のきっかけがあるのです。

■発想法

デザイン前提条件をベースに、分解した各要素を組み合わせたり、様々にアレンジしながらラフスケッチをしていきます。発想法と各要素は切り離せません。この二つは常に連携して思考の中に入れ、組み合わせながら可能性を求めていきます。
拡大法、縮小法、置換法など、様々な思考法があります。大きくしてみる、小さくしてみる、厚くする、薄くする、極端に変形してみる、無くしてみる、隠してみる、外に出す、内に入れる、切り離す、くっつける、浮かす、別素材に変える、必要悪を生かせないか、別の構造物の応用は可能か(機械部品・建築構造物)等です。また、使用される全ての部品のチェックと、そこからの発想は大切です。部品のチェックにより、構造の改良も可能になってきます。
さらに、一つだけの概念では弱すぎる場合があります。複数のイメージが結合したものを考えることは大切です。しかし、一つのイメージへ融合しなければいけません。
等々、自分自身に発想の逆転を要求したり、様々な視点から観るトレーニングを行ないます。これによって発想の自家撞着を自分自身で回避できます。最も、回避できなくては新たな発想は生まれないということですが・・・。

このトレーニングで効果が上がる方法は、1.テーマで、2.期間、3.ある程度の仕上がりレベルを決め、毎日20〜30枚のスケッチを書くノルマを自分に課せます。
 最初は自分の好きな作品などを範にしたものなど、割と簡単に描けます。しかし、徐々に「ネタ」がつき、描くものが無くなってきます。そうすると、別の素材を用いるということを考え始めます。全てを試してみて、もう何も出ないという段階で、自分のスケッチなり、発想を評価してみます。発想が偏っていないか、ある思考に集中しすぎていないか、感情的に避けている素材、処理は無いか、などです。そして、もう一度最初に戻って再度始めるのです。発想が尽き果てた頃、新たな着想が生まれます。これを是非経験して下さい。確実に「発想力」は増大します。
また、淀みなく湧き出るときもあります。もちろん全て描いていきます。テーマにそぐわないものでも書き取ります。後々使えるからです。

十分納得のいくものが出てくるまで時間をかけて描きます。、スケジュールの関係であまり時間を取れない場合がありますから、相当集中しなくてはなりません。この段階の充実度が成果を分けます。素晴らしい作品にはそれだけのエネルギーが投下されているのは間違いありません

■参考:発想法について

所で、アイデアが出ない、発想法がわからないということを聞きます。発想法のトレーニングの第一歩は、身近にある様々なものについて、疑ってみるということが大事だと思います。例えば、洗濯バサミのようなものでも良いのです。昇降盤の場合には、なぜ、定番が昇降するのか、その構造のメリットを考えるのです。なるほど、ユニークな考え方だなぁ、というようなものは身近にある様々な工業製品で発見できるはずです。
この訓練の積み重ねが大切だと思います。発想法の鍵で最も大切なことは、常日頃からこのような見方をしておくということです。
次に、テーマに関しての充分な知識と理解が大切です。これは情報の収集と分析を行うことで深まっていきます。充分な知識、理解が無ければ新しいアイデアが生まれるのは難しいわけです。

また、他作品や商品のアイデアを知り、それを応用したり、組み合わせたり、ヒントにしてアレンジを重ねます。明らかに、何々をヒントにしたということが分かっても、それを基に新しい解釈やアレンジが加えられ、より良くなった作品や商品はモノマネだとは誰も言いません。そこには明らかに充分な時間、労力を投下したことが理解できるからです。

私の場合はほとんどありませんが、時には「ひらめき」の訪れることもあります。ずっと一つのテーマが思考の中にあり、それに関しての思考がある程度熟成された後、「ストン」というような感じでまとまるのです。長い努力の後にはこのようなことも確かにあります。

車の形状や、「面」の繋がりを観察すると、「丸っこい」デザインでも「メリハリ」 のあるもの、無いものがあります。優しさの中の緊張感です。これは大切です。さり気無く置かれ、主張しすぎることはなくても、存在感を感じるものができます。つまり、「人知」を感じるのではないかと思います。どこでそれが変わってくるのかということを捉えるのは必要です。
この観察のもう一方のメリットは、飽きのこないデザインの「キー」をさぐることができるのです。飽きの来ないスタンダードなデザインは最も難しいものです。欧州車の一部には非常にロジカルにまとめてあると感じるものがあります。集団の解釈の積分であり、さり気無い処理に多くの時間が割かれてあると感じます。これらの観察はキャビネットのデザインに生きるのです。

■ラフスケッチ

資料が揃えば、次は発想法ですが、この段階は常にラフスケッチ(手書きの簡単なスケッチ:次項イラストを参照のこと)と共にあると考えていいかと思います。大切な事ですのでラフスケッチについて説明します。

  1. 用いるのは滑りの良いペン。滑りの良いものなら何でも可能。細すぎるペンは避けた方がいい。後で着色する場合、自分のマーカーペンが水性ならラフスケッチには油性ボールペンを使い、マーカーペンが油性ならスケッチには水性ボールペンを使う。滲まないためである。
  2. 書くサイズは任意であるが、初期段階では手首の移動だけで書ける小さいサイズのほうが素早く仕上がり、バランスも取り易い。
  3. 用紙はA4とする。この段階で大きすぎる必要はなし。クロッキー帳等でも可。

その他の注意事項として・・・。

  1. その他、金属部品などと組み合わせる場合は、スケッチと共に構造も考えなければなりません。全ての構造の検討無しには構成はできないからです。
  2. スケッチ段階でも、部分的に原寸で検討する必要があります。常に寸法の確認をします。

この段階で得たスケッチには、かなりバランスの取れたいいものも含まれます。そのようなスケッチは、そのイメージを壊さないように注意しながら原寸サイズに展開します。

以上が発想段階です。この段階で、大まかなデザイン、製品概念が形作られるといって良いかと思います。更に作業を進めた段階で形にすることが不可能なケースが出て来ますが、戻ってやり直します。その時に使えなくても良いアイデアは保存しておかなくてはなりません。使えるチャンスは来るものです。あるレベルのものを得ようとすると、スケッチはかなり書き込む必要があります。始終書かなくてはなりません。何事もそうですが、良いものを得ようとすれば、相応の時間、エネルギーの投下は必要だと思います。

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